It's Not About the IP

- IP(Intellectual Property), Computer Technology, Ocean Life, Triathlon, and more

一橋大学キャンパスツアー的な

前2回にわたってお送りしました「インターネット時代の知財を再定義する試みβ」のスピンオフとして、これを調べたり考えたりするのに一橋大学の図書館に籠ったときに撮った写真をいくつか挙げておきます。

インターネット時代の知財を再定義する試みβ(2) - It's Not About the IP
インターネット時代の知財を再定義する試みβ(1) - It's Not About the IP

全体像はこんな感じ。
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JR中央線国立駅から一直線に南に延びる大学通りの西側と東側にキャンパスがあります。国分寺と立川の間だから一文字ずつとって国立、というのがもともとの地名の由来のようで、箱根土地が文教地区としていろいろ頑張って誘致したみたいですね。いまではすっかり国立市(クニタチシ)として成立して「国立市立国立小学校」とか「国立ほげほげ歯科医院」とかあって文字面だけみるとコクリツの施設なの?と一瞬思ってしまうトリックにあふれています。この街で「国立」という文字をみたときはクニタチなのかコクリツなのか文脈から一瞬考えないといけないという面倒な感じなんですけどだいたいクニタチで合ってる。

一橋大学の図書館。
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一橋のキャンパスには伊藤忠太さんという築地本願寺なんかも設計した建築家が設計したものがけっこうあって、この方が妖怪のような何かをモチーフにするのが好きという癖があったようで、変わった妖怪のようなものがところどころにあります。この手前にもよくわからないレリーフがありますね。

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夜は時計台の文字盤が光ります。

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シンボル・兼松講堂と佐野善作先生。佐野善作先生はもともと皇居脇にあった一橋大学の前身である東京高等商業学校が大学に昇格した時の学長で、関東大震災で皇居脇のキャンパスが崩壊して国立の地にキャンパスを移したりとか色々とご尽力された方。

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キャンパス内は地域に開放されていて、朝なんかは近所の方が集まってラジオ体操やってたりします。キャンパス内の林にはカブトムシとかもいて、夏の早朝には近所の子供たちがカブトムシ採集で盛り上がっていたりする。

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兼松講堂の隣にあるのは矢野二郎先生の立像。佐野善作先生よりも前の商法講習所の時代から校長を務めていたりした方。

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佐野先生の左側にあるのが西キャンパス本館。「おおかみこどもの雨と雪」の前半は国立が舞台になっていて、花とおおかみおとこが出会うのはこの本館の教室です。

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本館の入り口部分。

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本館入り口のエントランス部分にあるレリーフ。ちょっと怖い顔してますが、よくみると左右で阿吽になっていて愛嬌があります。

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キャンパス内には指定文化財になっている建造物があるんですけど、この旧守衛所もそれ。

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西キャンパス奥にある陸上トラックから図書館を望む。

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西キャンパスから南側の道を一本隔てたところにある佐野書院は、佐野善作先生の住居跡。いまでは一橋大学の所有地です。

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東キャンパスの入り口。西キャンパス←→東キャンパスをつなぐ横断歩道は、一橋大学の授業時間に合わせて学生が移動するために赤と青の時間が調整されているとかいないとか。

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東キャンパス本館。この前にある池にふざけて入ると退学になるという噂。

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東キャンパスからちょっと離れたところにある寮。一橋大学の校章であるマーキュリーマークがあります。

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の近くにある多摩蘭坂の標柱。よくわかんないんですが、忌野清志郎さん率いるRCサクセションの名曲「多摩蘭坂」の聖地らしいです。忌野清志郎 さんがこの坂の途中のアパートに住んでいたことがあったらしい。


RCサクセション 多摩蘭坂 at 武道館 1981 (曲前が首都圏版より数秒長い地方版)

落ち着いた、品のある良い街ですね、国立。

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オマケ :皇居脇の一ツ橋にある如水会館渋沢栄一
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インターネット時代の知財を再定義する試みβ(2)

(承前)
ysmatsud.hatenablog.com

そんなわけで論文掘りをしているんですけど、いやあすごいですわ。まあまあ知財のこと知ってるつもりになっていましたけど、アカデミアの門の向こうに知らない世界が広がっていました。実務や弁理士試験には出てこない知財哲学の荒野。

早速その荒野で迷子になりかけているので、ちょっと道標としてのインデックスを。

知財権の根拠

知財っていったいなんで、なんのためにあるの、という理屈の再構築が議論されている。

公開の代償として独占権を与える、とかよくあるあれ。創作物が生む経済的利益の独占を創作者に認めることで創作のインセンティブを与える。帰結主義的か。

発明や表現は人格の発露だから、人格として保護すべきとする考え方。この発想は特許法の条文上にはないが、わりと真面目に議論されている。ソフトウェア産業における特許制度は害であることが実証経済学として証明されてしまったので、特許の存在意義はインセンティブ論では説明がつかない。そこでこれがもてはやされてるんだと思う。条文から読めないけどな!

破綻する特許―裁判官、官僚、弁護士がどのようにイノベータを危機に

破綻する特許―裁判官、官僚、弁護士がどのようにイノベータを危機に

  • 作者: ジェームズ・ベッセン,マイケル・J.モイラー,浜田聖司
  • 出版社/メーカー: 現代人文社
  • 発売日: 2014/08/20
  • メディア: 単行本
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〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学

〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学

白田秀彰先生の「コピーライトの史的展開」には、英米においてもともとインセンティブ論だったところに自然権論が混じっていった過程が研究されている、、、のかな?

森村進先生は、財産権とはそもそも、財が希少であるからこそ支配権に関する争いを解決するためのルールなんであって、使ってもなくならないアイデアや表現など無限に複製できるものについて財産権というルールを設定するのは自然とはいえない、と主張されている。リバタリアン的な見地からIPを懐疑的に捉えているようだ。自然じゃないから。ふむふむ。

[論文] 森村進 / 知的財産権に関するリバタリアンの議論

財産権の理論 (法哲学叢書)

財産権の理論 (法哲学叢書)

  • 契約論

知財権の根拠を、所有権法でも不法行為法でもなく契約法に基づくものとして捉えなおそうとしているのが最近の島並良先生。まじすか。めちゃ尖ってる。教科書とか書いている大御所の先生が裏ではそんなぶっとんだこといってるなんて素敵。
曰く、特許制度は、市民の意思の総体として(選ばれた議員が)つくった特許法に基づいて運営されており、このスキームは市民自身の意思がベースだから、特許権は特許出願人と公衆との間の社会契約である。特許侵害とは、この社会契約の違反である。みたいな話。

kaken.nii.ac.jp

技術分野によって違うよねという話

  • 医薬品とか化学もの

薬なんかは開発のためにものっそい何億とか何百億とかのお金がかかるから、それを回収するために特許を与える必要があるし、内容を開示して重複研究を避けることは全体最適としても機能する。また化学式で発明を定義、特定できるから、侵害/非侵害も比較的わかりやすく権利行使場面でも概ね期待通りに機能する。

  • 機械とか構造もの

機械も構造ものなんかは図面でバシッと表すことができるし権利範囲が比較的明確なので権利行使場面でも機能する。

  • ソフトウェア

ビジネスモデルものの発明はポッと出のアイデアも多いから開発費用の回収という意義は希薄。サービスサイクルもはやく特許公開とかの前にバンバン公開されていくから特許公報として公開する意義も希薄。そして権利はあいまいな言葉で表されたクレームに基づいて解釈されるので、侵害/非侵害の明確な判断が困難、というか不可能。
→役に立ってないじゃん

じゃあもう特許制度なんかやめちゃえば良いじゃんという議論

じゃあもう少なくともソフトウェアの分野では特許やめちゃえば良いんじゃないの?と素直に思うわけですけど、そうできない理由は2つ。
・TRIPS協定27条。技術分野を任意に絞らないことが求められている。
・経路依存性。経済学や社会科学の用語で、制度として確立して組織ができてしまうとその組織自体が制度を維持することを目的として維持されてしまうということが起きる。ソフトウェア特許の世界でも、そのための特許庁、特許事務所、企業知財部員などの組織が既に出来上がってしまっているので簡単にはなくせない。…これはあるよなと思っていたんだけど、田村善之先生がこのことを既に経路依存性という社会科学用語で説明していた。すごい。

プロ・イノヴェイションのための特許制度の muddling through (5・完) : HUSCAP

こうなると、EPやUSは、特許の土俵には乗せるけどなかなか権利化させないというわけでうまくやってるよなと思う。

ちなみに分野に限らず、昔は技術を特許を特許公報として国の手間でみんなのみえるところに置いて公開するという意義があったけど、今日では個人でもインターネットで簡単に世界中に公開できるから、そういう意味でも特許制度の意義は薄くなってる、という話はあると思う。これも社会科学のアカデミックの文脈でどなたかが既に説明しているだろうか。

じゃあどうするのという議論

・ USでは、トロールによる特許侵害訴訟なんかでは損害賠償は認めても差止を認めないという判例が確立しつつある。日本でもこのようにすることは可能なはず。

・これはどこまで関係あるかわからないメタな話だけど、改めて読んで置きたいなと思ってる。インターネット後に目指す社会システムはフラットではなくステップでもなく、「なめらか」であるという提案。

なめらかな社会とその敵

なめらかな社会とその敵

・これもメタな話だけど改めて読んで置きたいなと思ってる。気鋭の若手シャレオツ弁護士による、より良いインターネット後の社会を目指すための提案。

法のデザイン?創造性とイノベーションは法によって加速する

法のデザイン?創造性とイノベーションは法によって加速する

・ 田村先生は、特許を財産権というよりも行為規制として捉え直すことを提案している。これもまた尖ってますけど、すごくリーズナブルなように思う。胸熱。この論文の破壊力がやばい。興奮した。

プロ・イノヴェイションのための特許制度の muddling through (5・完) : HUSCAP

曰く、特許権は財産権のようなかたちをとっているがその実態は行為規制なんだし、行為規制である独占禁止法と場面場面で使い分けて、特許庁、裁判所、公正取引委員会の役割分担の問題として捉え直すのはどうだろうか、みたいな感じ。

すごい。感動した。大学の先生たちって、教科書かいたり判例解説したりしてるだけじゃなかったんや!!

インターネット時代の知財を再定義する試みβ(1)

ソフトウェアエンジニアをやっていた15年前、プロプライタリなソフトウェアを尻目に先端いきまくってるOSSがカッコよく見えて、インターネット/ソフトウェアに関する知財制度は考え直されるべきだ、と思ったのがもともと知財に興味をもったきっかけでした。

なんやかんやで大学院に通い始めたんですけど研究計画のためにつくったスライド晒す。

というわけで先行研究としての論文を探して読み始めているんですけど、なるほどー。インターネット時代に特許制度が馴染んでないと考えている人はアカデミックの世界にも確かにいるんですね。知らなかった。あの先生とかあの先生とかお名前は聞いたことありましたけど、けっこう尖ったこといってるんですね。面白いっス。

けっこう色んなところで色んな方が色んなこといってるので、色々インプットする前に、私の今の粗っぽいそもそもの思いみたいなものを忘れないうちにメモしておきます。

まだ知識も実務経験も積む前の12年前にほとばしるように書いたエントリも参考まで。

なぜいま知的財産がオモロイのか?(3) - It's Not About the IP
なぜいま知的財産がオモロイのか?(2) - It's Not About the IP
なぜいま知的財産がオモロイのか?(1) - It's Not About the IP

うーん、なるほど、こんなことを考えていたな。わかるわかる。わかるし、今考えていることは確かにこの延長にもあると思うけど、違うところは違うな。たぶんこのときに考えていたのはどちらかというと、インターネットとIP(知財)による「フラットな社会の実現」みたいなことだと思う。でも、例えばお金っていうか金融ってのはまさにそれなんだよね。地球を削らなくても、人間にとって価値があるお金を増やすことができる。それはやっぱり金持ちがますます金持ちになり貧乏人はますます貧乏になるシステムで、ある程度は虚構だしファックなマネーゲームだけれど、「地球を削らなくても価値を増やす、経済を回す」という問いには答えているんだと思う、たぶん。錬金術というのはお伽噺ではなく完成していたんだな。

どうなんだろう、めっちゃ現実に戻りますけど、いまソフトウェア特許の実務の世界で何が困るかっていうとですね。特許ありすぎなんですわ日本。USやEPがソフトウェアの特許に関して大きくアンチパテントの方向に舵を切った逆をいくように、日本では特許が量産されてる。時代遅れのプロパテント。特許庁代理人にとっては権利化数も増やして各々の権利も強くした方が仕事が増えて良いんだろうけど、そうじゃないでしょ。

ほらほら中山先生もいってますよ、中山先生のいうことはいつも正しい。

"知的財産制度自体が主役なのではなく、産業や文化の担い手が主役であり、知的財産制度はイノベーション促進の脇役であるという点を忘れてはならない。"
中山信弘「知的財産立国の更なる発展を目指して」 ジュリスト(No.1405)2010.8.1-15 p.7

Jurist(ジュリスト)2010年 8/15号 [雑誌]

Jurist(ジュリスト)2010年 8/15号 [雑誌]

そのプロパテント、少なくともソフトウェアの世界では、特許庁代理人しか得してなくないですか。なくなくなくなくなくないですか。

だって実務の世界で切実なのは自分が特許とることよりも、他者の特許を踏まないことですから。誠実に事業活動しようとする産業の担い手である企業にとって、自分が権利とれることよりも他社特許の監視コストが増えるっていう方が深刻なんですよ。わかるかな。

そして一方で、スタートアップが特許とるのは良いことだと思いますけど、ぶっちゃけて言いますけど、ソフトウェアの世界で、どーしても回避できない特許、またはどーしても潰せない特許、っていうのは、ない、とはいわないですけど、すごーーーく稀ですよ。あ、ここでいってるソフトウェアってのは、あんまり技術技術してない、ビジネスモデルっぽいやつのことですよ。ハードウェアとか医薬品とかはもちろん別ですよ。

ちなみに控えめに言いましたけど、個人的に言えば、ない、ですよ。絶対に非充足の理屈が立てられないと思った他社特許。ない。事務所で代理人としてプロフェッショナルに鑑定やってた時代から、違う意味でよりシビアに他社特許をみるようになった現在に至るまで。

というわけで、USやEPがソフトウェアの特許に関してアンチパテントの方向に舵を切ったのは上手くやったなって感じですわむしろ。うらやましい。とかいっちゃいけないのかもしれないけど。

(つづく)

リバタリアニズム事始め。あるいはソフトウェア特許はリバタリアンの夢をみるか。

特許ってなんなん?(ネガディブな意味で)

発明を公開する代償として独占権を与える?インセンティブを与えないと発明が秘匿されて技術も社会も経済も発展しない?

ほんと?

世界で最も使われているOSはLinuxですけど、独占権なんて与えなくても公開されてますしおすし。

AndroidLinuxベースだしOSSだし。最も使われているOSとはつまり最も使われているソフトウェアですけど、この世で最も使われているソフトウェアがLinuxなのはそれが無料だからではなくて、高機能で安定して動くからですけど。最も先にいってるソフトウェア技術にとって特許制度は貢献しているどころかむしろ脅威になっちゃってますしおすし。

IPランドスケープ
は?

ディープラーニングブロックチェーンなんかの尖った分野ほど、特許よりもOSSや論文の世界の方が全然先にいってますけど。

…という疑問が、特許制度に対する興味の根幹にあります。

これは必ずしも特許制度なんてクソだと言いたいわけではなくて、インターネット/ソフトウェアの世界における知財制度は如何にあるべきか、どうあったら技術の発展に寄与できるのかってもっと真面目に考え直した方が良いんじゃないの、という話です。これは実務的にいえば、インターネット/ソフトウェアの世界で事業をやっていくために如何なる知財戦略をとることが誠実であるか、という話でもあります。

こういう疑問に対して感情論でなく建設的に考えたいなと思って大学院に通い始めたわけですけど、アカデミックな研究のお作法みたいなものを学ぶ中で、リバタリアニズムというのを知りました。論文として何かを主張するのに完全な客観というのはありえないし、思想の軸がないといってることがブレて説得力もなくなる、というわけです。リバタリアンというのはよくわかりませんが共感できるところが多いような気がしていて、一橋大学法哲学の講義をされている森村先生がこのスジの研究をされて本を書かれているようで、せっかくなのでいくつか読んで染まってみようかと思っています。

自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門 (講談社現代新書)

自由はどこまで可能か=リバタリアニズム入門 (講談社現代新書)

というわけでとりあえずこれを読んだのでメモ。

リバタリアニズムはかつてはリベラルの亜流と考えられていたが、現在ではこのように整理されていることが多い。

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(『自由はどこまで可能か リバタリアニズム入門』森村進 p.14)

個人の自由は尊重するが経済への規制や財の再分配を擁護するのがリベラル。

経済の自由を尊重するが個人への介入を擁護するのが保守(コンサバティブ)。

個人にも経済にも介入するのが権威主義(オーソリテリアン)、あるいは人民主義者(ポピュリスト)。この極端な例が全体主義で、ファシズム共産主義はココ。

そして個人の自由も経済の自由も尊重するのがリバタリアン。基本的に、国家権力に裏打ちされる不効率な官僚機構に任せるよりも、市場経済に任せる方がうまくいく、と考える。

リバタリアニズムを分類する試み
リバタリアニズムを、「いかなる国家(政府)までを正当とみなすか」と「諸個人の自由の尊重を正当化する根拠は何か」とを軸としてざっくりと分類すると以下のように考えることができる。共通していえるのは、個人の自由だけでなく経済の自由を尊重する、ということと、自己所有権というテーゼ。自身の精神と身体は、自身が絶対的な排他支配権をもつ。

正当な国家とは

個人の自由尊重の根拠
無政府資本主義(アナルコ・キャピタリズム)、市場アナーキズム
国家なんていらない
最小国家
国防、治安、裁判、最低限の公共財の供給
古典的自由主義
←に加えてある程度の福祉、サービスも提供する「小さな政府」
基本権、自然権
生まれながらにしてもつ当然の権利だから
自然権論的無政府資本主義
マレー・ロスバード『自由の倫理』
自然権論的最小国家
ノージックアナーキー・国家・ユートピア
自然権論的古典的自由主義
ジョン・ロック『統治論』
アメリカ建国の父、トマス・ジェファーソン
森村進
帰結主義
その方が結果としてみんな幸せになるから
帰結主義的無政府資本主義
デイビッド・フリードマン『自由の機構』
竹内靖雄『国家と神の資本論
帰結主義最小国家
ランディ・バーネット『自由の構造』
帰結主義古典的自由主義
ミーゼス
ハイエク
アダム・スミスミルトン・フリードマン
契約論
理性的ならそうなるはずだから
契約論的無政府資本主義
ジョン・ナーブソン『リバタリアニズムの理念』
契約論的最小国家 契約論的古典的自由主義
ジェイムズ・ブキャナン『自由の限界』
デイビッド・ゴディエ『合意による道徳』

<雑考・メモ>
・特許というのは国家による設権的権利なので、無政府資本主義の立場からは認め難いということになると思う。
・アイデアや表現というのは人格の発露であると考えれば、特許権著作権は人格権であり基本権であり自然権であるということになるんだろう。アメリカなんかは特許実務的に発明者が誰であるかってめっちゃ厳しくて、あれって自然権的な発想なんだろうなと思っていたんだけどそういうことで良いんだろうか。
知財立国を言い出した小泉政権はやたら「小さな政府」をいっていた気がするが、あれはこのリバタリアン古典的自由主義というやつなんだろうか。竹中平蔵さんはこういう分類でいうとどの辺になるんだろう。
ハイエクというのはそういえば昔本を読んでエントリを書いたな。復習してみよう。
リバタリアンにとって自己奴隷化と臓器売買の是非という頻出命題があるらしいんだけど、自己奴隷に対する森村先生の見解は、「非。なぜなら将来の自分は現在の自分にとって他人だから」。こ、これは、、、寺山修司や。去り行く一切は比喩に過ぎない。
・特許の根拠には自然権論とインセンティブ論(帰結主義?)があって、インセンティブ論では最近のOSSによる技術革新とかに説明がつかないので自然権論が盛り上がってきてる、と思ってる。それって理解できるけど、やっぱり無理矢理こじつけた感ないですかね。「特許制度は既にあるからなくすべきでない」という前提に立ってる気がする。でもよくわかんないけど残ってるものは残す、というのもリバタリアンなのかもしれない。
リバタリアン的な発想からでてくるのが裁判所でなく私的な仲介、調停サービスであるADR
リバタリアン的な発想でいくと、刑事罰廃止論というのが当然にでてくる。損害賠償だけで良い的な。ジョンロックによれば、処罰権というのも本来は自然権で、誰もが早い者勝ちで持っていた処罰権を安定性と予見可能性のために集約したのが刑事罰
・「権力は腐敗する。絶対権力は絶対的に腐敗する」。政府は悪である。政府とは、無政府資本主義者以外のリバタリアンにとって必要悪として認める悪である。無政府資本主義者のリバタリアンにとっては不必要な悪である。
特許権著作権は独占排他的な財産権であるが、ここに損害賠償請求権と差止請求権とのを認めるかというのは政策的な問題であって、例えば利用を重視するなら、損害賠償請求権を認めるが差止請求権は認めない、という制度設計は理論上あり得る。
・ジョンロックがいうような、労働の結果として表れた財物はその労働を行った人のものだという考えを適用して、発明や著作物を生み出した者はその労働の成果としての無体財産についての排他的権利を得る、、というのは、一見スジが通っているけど突っ込みどころはある。例えば耕した土地や掘り起こした鉱物や採取した果実は物理的に必然的に独占排他的であり誰かが使えば(消費すれば)他の誰かは消費できないけれども、無体財産はそうではない。誰かが使っても他の人が使えなくなるわけではないし無くなるわけでもない。やはり無体財産は本来的に財産なわけではない。法律によってはじめて財物となる。無体財産が経済的な価値を持つのは、それが法律によって独占権が与えられて人工的に希少性を与えられるからであって、そうでなければ経済的な価値を生み出さない。ここでは表現や思想としての価値の話はしていない、あくまでも経済的な価値の話。やはり改めてでてくるわけだ、無体財産とは財物か?
・IPは表現の自由に対する制約といえる
・財産権とは、財が希少であるからこそ、その財の支配権に関する争いを解決するためのルール。使ってもなくならないものや無限に複製できるものについて財産権というルールを設定するのは少なくとも自然とはいえない。→森村先生はIPを懐疑的に捉えているようだ ∵自然じゃないから
リバタリアンが国による介入を嫌う理由の一つは、独占をきらうから。独占すると進歩がなくなり、市場による自由な競争状態にあれば進歩があるはずだと考えるから。
・市場による競争というのは弱肉強食をいっているのではない。市場における交換というのは等価交換ではなくて、お互いが利益を得るプラス・サム・ゲームである。
・とすると、独占禁止法というのはリバタリアン的なのかな、、
リバタリアンというのは、個々の人間が合理的で理知的にかつ利他的に行動することへの期待というか信頼のようなものを前提としているような気はする。人間がやってることって本質的には昔から変わらないと思ってるのでこれってちょっと無邪気のような気もするけど、昔は奴隷制度とか当たり前だったけど今日ではそうではないこととかを考えると、人間って全体として賢くなってるよねといえばそうなのかもしれないな。
リバタリアンであるハイエクは、『貨幣発行自由化論』(1976年)において、民間の銀行が競争して異なった通貨を発行する制度を主張したらしい。それってICO、仮想通貨じゃん。

↑以外でとりあえず手元に集めたのは以下。夏の間にこれだけ読んでみる。

法哲学講義 (筑摩選書)

法哲学講義 (筑摩選書)

財産権の理論 (法哲学叢書)

財産権の理論 (法哲学叢書)

リバタリアンはこう考える: 法哲学論集 (学術選書)

リバタリアンはこう考える: 法哲学論集 (学術選書)

リバタリアニズム読本

リバタリアニズム読本

上記リバタリアニズムの思想をインプットした上で、改めてそういう視点で以下の「インターネット時代の知財を考える三部作」を読んでみる。

コモンズ

コモンズ

〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学

〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学

知財の正義

知財の正義

一橋大学大学院に入学しました ~東京で通う知財系大学院まとめ~

この春に一橋大学大学院法学研究科ビジネスロー専攻というところに正規の学生として入学しました。

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なんやかんやで知財実務で飯を食うようになってけっこう経ちますが、そもそも知財ってなにそれおいしいの、本当に必要ですかその制度、という疑問が知財に興味を持ち始めた発端としてあります。そういう、そもそもなんなの、どうあるべきなの、ということをアカデミックに考えたいなという思いはずっとありました。それでまあいろいろ事情も重なりまして、今でしょ、ということで入学することにしましたイマココ。

社会人として昼間は働きながら東京の大学院で知財を学ぶ、というと選択肢は私立4、国公立3の以下7択になるかと思います。

私立

大学 金沢工業大学 東京理科大学 早稲田大学 日本大学
知財コース 虎ノ門大学院 イノベーションマネジメント研究科 イノベーションマネジメント専攻 専門職大学院 経営学研究科 技術経営専攻(MOT) 大学院法学研究科 先端法学専攻 知的財産法LL.M. 大学院法学研究科 私法学専攻 知的財産コース
場所 虎ノ門 飯田橋 早稲田 or/and 日本橋 水道橋
平日講義開始時刻 19:00-
20:40-
18:40-
20:20-
14:45-
16:30-
18:15-
19:55-
18:30-
20:10-
1コマ講義時間 90min 90min 90min 90min
定員 40名 80名 若干名 若干名(社会人特別入試)
修了要件 1年以上在学し36単位以上を修得、必要な研究指導を受けたうえ修士論文又は特定の課題についての研究の成果の審査及び試験に合格 2年以上在学し、40単位以上を修得 / 2年次の演習科目「プロジェクト」で、グラデュエーションペーパーを作成・提出 30単位以上取得、修士論文の審査合格
学位 修士(知的財産マネジメント) 修士(技術経営) 修士(先端法学) 修士(法学)
入学検定料 30,000円 35,000円 30,000円 35,000円
最短修了学費 2,180,000円 3,140,000円 1,130,500円
(1年の場合)
1,680,000円

金沢工業大学

ネットやメディアなどに積極的に情報を出していて、社会人が東京で知財大学院いこうと思ったときに最も目にするのはここなんじゃないでしょうか。実際、ここの卒業生という方には知財業界ではけっこうお会いするし、ネットワークも強く仲が良い印象です。同窓の親睦を図る仕掛けやイベントもいろいろ用意されているようで、そこのつながりから仕事になったみたいな話もよく聞きます。弁理士試験の一部免除などもあり、もともと知財業界にいる方のみならず、これから知財業界に入っていく方にも良い環境だと思います。

東京理科大学

MIPとかMOTとか、知財立国を支援する知財系大学院の雄として多彩なコースを用意していましたが、一部縮小してより密度の高いコース群に編成しなおして再出発というイメージ。そもそも理科大出身の弁理士は多いですし、文系出身の弁理士理科大の二部に通って理工系の学位をとるという話もよくあるので、知財業界では頻繁に名前をみかける馴染みの深い大学です。

早稲田大学

今年から始まった、社会人向けを銘打った知財の大学院。平日18:15-の授業と土曜を中心に1年で修士課程を修了する集中プログラム。ただ、土曜丸々と平日1日はデイタイムを使うのがほぼ必須になるようなので、わりと身軽に動ける方向けでしょうか。家庭があったりする方には厳しいかなという気がします。早稲田キャンパスに通うのが難しい社会人向けに、日本橋のサテライトキャンパスで中継で受講できるようです。なにそれすごい。弁理士の方は、ここで学べば弁理士会派閥の一角を占める稲門弁理士クラブに入れることになりますね。

日本大学

社会人特別入試というのがあって、平日夜と土曜の受講で修了できるように組まれたカリキュラムがあるようです。知財コースは博士前記課程(修士)のみで博士後期課程はなく、弁理士試験筆記試験科目(短答式及び論文式選択科目)の免除制度に対応しています。

// 青山学院大学大学院法学研究科ビジネス法務専攻にあった知的財産プログラムは、2018年度から募集停止したようです。

国公立

大学 筑波大学 東京工業大学 一橋大学
知財コース 東京キャンパス社会人大学院 ビジネス科学研究科 企業法学専攻 知的財産法コース 環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程 / イノベーション科学系 法学研究科ビジネスロー専攻
場所 大塚 大岡山 or/and 田町 神保町
平日講義開始時刻 18:20-
19:45-
16:50-
18:30-
18:20-
20:15-
1コマ講義時間 75min 90min 105min
定員 30名 40名 36名
修了要件 30単位以上修得し,修士論文の審査及び最終試験に合格 40 単位以上取得、プロジェクトレポート審査および最終審査に合格 2年以上在学して30単位以上を取得、必要な研究指導を受けた上で学位論⽂の審査及び最終審査に合格
学位 修士(法学) 修士(技術経営) 修士(経営法)
入学検定料 30,000円 30,000円 30,000円
最短修了学費 1,353,600円 1,353,600円 1,353,600円

筑波大学

筑波大学が東京キャンパスでやっている社会人大学院にも知財コースがあります。校章が五三の桐で、弁理士バッジと同じなのでなんとなく親近感があります。1コマの講義時間が75minと短め。場所は大塚で、NHKドラマ「いだてん」で金栗四三が通っている東京高等師範学校があったキャンパスです。

東京工業大学

東工大にも「社会人学生に配慮」を銘打った大学院がありますが、授業は平日の15:05-、16:50-、18:30-の3コマとプラス土曜日で、平日デイタイムもある程度は大学に来れる時間をとれる方でないと行き難いかなという印象もあります。ただやはり技術系で硬派かつ孤高な圧倒的ブランドイメージを持つ東工大で、技術経営の学位をとったというのは特許業界で生きていく上で強力な印籠になると思います。

一橋大学

特許実務の現場で一橋というのはあまり馴染みがないですが、特許にこだわらずに俯瞰すれば文明開化の頃からビジネスと社会科学のフロンティアを切り拓いてきた大学です。特許の蛸壺におさまらず、MBAの社会人学生に紛れてここで実務法学を学ぶというのは、なかなか面白いんじゃないでしょうか。

教育訓練給付制度

大学院での学びが実務に直結するものであれば、けっこうな割合の学費が支給される教育訓練給付制度というのがあります。 ここにけっこう詳しい情報が載ってます。上記各コースも対象の模様。

この辺りを踏まえて、最終的には直観で選ぶ。行きたいと思ったところに行く。
入学して約1か月経ち、まだまだ生活には慣れないし予習も復習も追いついてないですが、すごく面白いです。

今年の芥川賞は仮想通貨を題材にした『ニムロッド』。読んだ

盛り上がったり盛り下がったりする仮想通貨/ブロックチェーンのテクノロジーイーサリアムもこないだ50%攻撃を食らったようですし、なんかすごそうだぞといわれながらなかなか実用化する未来はみえてこないですね。

そんなこんなで今年の芥川賞、上田岳弘『ニムロッド』は仮想通貨を題材にした小説です。そうきたかって感じですね。芥川賞という伝統文化っぽいのものと、仮想通貨というフワフワと尖ったものが並んでるってのがなんだかちょっとシュールです。面白かった。

第160回芥川賞受賞 ニムロッド

第160回芥川賞受賞 ニムロッド

単行本出てる。

文藝春秋で全文読めます。

仮想通貨について考えると、そもそもお金ってなんなんだって改めて考えるじゃないですか。旅行やらなんやらで知らない人ばかりの知らない土地でもお金があるとわりと簡単になんとかなるという体験をするとき、お金ってものすごく絶対的な価値を持ってるように感じるわけですけど。でもお金ってもともとは貝殻とかで架空的につくりあげた指標でしかなくて、抽象的な概念をみんなで共有してるということでしかない。法定通貨ってのは国家による裏付けがあるわけですけど、国家というのも抽象的な概念なわけで。そんなの一夜にしてフワッとなくなってしまったりしそうなものだけど、あんまりそういうことは起こらない。人間社会って不条理なこともたくさんありますけど、根っこのところではかなり抽象的な概念をしっかりみんなで共有してる。人間って個の命がどうだとかいっても結局のところ集合体でしかないのかもしれないなあみたいな。

ちょっと前に世界中でベストセラーになったサピエンス全史もそういう話ですよね。人間の人間たる由縁は虚構を共有する能力だ的な。

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

この小説を読みながら、改めてそんなことを考えたりしました。

このニムロッドは、コンピュータ企業に勤めるエンジニアで、社長からある日突然ビットコインのマイニング事業を始めることを命じられた僕(38歳)の目線で語られます。主な登場人物は3人で、僕と、僕の恋人で元夫との子供を堕胎した過去をもつ彼女と、同じ会社に勤めながら小説家を志すも夢叶わずに鬱を患った先輩。

作者も同世代だし、どれもなんだか身近というか他人事とは思えない感じ。涙目のルカ的なのもあるし。世代の違う人にも刺さる普遍性がこの小説にあるのかってのは謎なんですけど、芥川賞に選ばれたってことは刺さる要素があるんでしょうね。

しかしこの作者の方、コンピュータ企業の役員やりながら小説かいてるらしいんですよね。すごいなあ。私も小説かこうかなあ(冗談です)

ちなみに作中に登場する「ダメな飛行機コレクション」はこちら→ダメな飛行機コレクション - NAVER まとめ

フルマラソン3時間一桁のためにやったこと

備忘録として。
先日の古河はなももマラソン(2018/3/11)で、初めてフルマラソン3時間ヒトケタまでいきました。 ラップタイム晒す。

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スペック

  • 非経験者(元陸上部だったとかではない)
  • 走り始めは2010年、初フルは2011年。タイムは4:40くらい。詳細はコチラ
  • はなもも以前のフルPB→3:24。詳細はコチラ
  • ハーフPB→1:28。詳細はコチラ
  • ウルトラ100km完走経験あり。詳細はコチラ
  • トライアスロンアイアンマン完走経験あり。詳細はコチラ

経緯

なんだかんだあってマラソンとかやってる場合じゃなくて2016年からまともに走ってなかったんですけど、2017年11月にちょっと一念発起して、フルマラソンやるかと。3月のはなもも走るかと。ここんとこ全然走ってなくて月間走行0kmだったけど、これから4ヶ月間、トライアスロンとか関係なくフルマラソンだけに焦点絞って真面目に練習したらどれだけサブスリーに近付けるのか、人体実験やってみるかと。いう結果がこれです。

トレーニングは開け過ぎない、詰め過ぎない

筋肉をしっかり追い込んで、しっかり休む。疲れが取れたとき筋肉は追い込んだ前よりも成長している。これが超回復。筋トレの基本。ランも同じ。
一回、一回を、意味を考えて走る。意味を考えて休む。
筋肉の回復には2-3日かかるといわれている。回復が不十分な状態でまた追い込んだら超回復しないままだし、逆に超回復が終わったままほっとけば衰え始める。トレーニングは、3日開けない。2日は開ける。
エリート選手は毎日走ってるみたいな話があるが、それはエリートの話。市民ランナーにとって毎日走るというのは楽しみや自己満足にはなってもトレーニングにはならない。

練習概要

  • 一ヶ月目 : LSD中心で走れる体を取り戻す
    2h-3hのLSD。スピードは気にしない。遅くて良い。姿勢は気にする。視線は、腰の位置は、傾きは、肩は、胸は、背中は、手の振りは、脚の運びは、着地位置は、接地箇所は、気にする。帰宅ランだと平日でも時間がとりやすい。

  • 二ヶ月目 : ぼちぼちスピ練を混ぜる
    トレミル。アイアンマンの練習してるときに調子の良かった10分で追い込むクイック練。傾斜10%つけて、時速10kmで5分、時速11kmで3分、時速12kmで2分のビルドアップ計10分。これとLSDを併用。

  • 三ヶ月目 : スピ練重視
    ヤッソインターバル。久しぶりにやったら、前やってた時よりも全然タイムが遅くて絶望した。スランプを感じる。スランプ脱出をかけて草レースを走っても、思うようなタイムが出ない。焦る。気分転換と思ってジムでがっつりウェイトトレーニングしたら腰を痛める。焦る。
    この頃、調整を兼ねた勝負レースと定めていた神奈川マラソンのハーフ。腰痛いので、レース前一週間は思い切って休む。何もしない。結果、サブ90。サブスリーペースのキロ4:10で、それなりに余裕残してフィニッシュ。ここで気分的にスランプ脱出。このペースであと半分押し切るのは困難ではあるが不可能でもないような気がした。勝負するしかない。

  • 四ヶ月目 : 仕上がり具合から課題を出して不足してるところを強化
    …と思っていたけど、腰痛いのが治らん。あんまり追い込みすぎると危険。神奈川マラソンで腰痛いのを庇いながら走ったからか、3ヶ月のトレーニングの疲労が貯まってきたか、足首やら膝やらに不穏な痛みを感じ始める。ヤバイなと思ったけど、神奈川マラソンでそれなりに身体は仕上がってるという感触はあったので、練習頻度を下げ、一回の練習をさらに濃いめに。400インターバルとか。

月間走行距離

特にちゃんと測ってないですけど、たぶん100-150kmくらい。頭使って練習すれば、月間100-150kmで3時間ヒトケタだせますよという例。

身体づくり/大豆プロテイン

あえての大豆。パンプアップにはホエイだが、持久力には大豆。トレーニング後30分以内がプロテイン摂取のゴールデンタイム。走るときはプロテインをいれたザックを背負って、走り終わったら公園の水道とかで溶かしてすぐ飲んでました。はっきりいってマズイですが、効果はあった、ような気がする。

大豆プロテイン 1kg 無添加 飲みやすいソイプロテイン

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DNS HANDY SHAKER (ハンディーシェイカー)

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ランとタバコのメカニズム

あんまり大きな声では言えませんが、タバコ吸います。ヘビーじゃないけど。1日0-5本くらいかな。いやーサラリーマンのタバコミュニケーション、バカにできないですよほんと。
エンデュランスにタバコがよくないのはわかります。肺がヤニで覆われると酸素の吸収力が減る。わかる。でもですね、アイアンマンやってたときは準備として1年間全くタバコ吸ってなかったんですけど、その前後でフルマラソンのタイムがあまり変わらなかったんですね。これあんまり関係ないわ実は、と。
でも、タバコ吸った直後に走ると明らかに走れない。タバコはランに長期的にはあんまり関係ないが、短期的にはものすごく関係ある、というのが実感。短期的に関係あるメカニズムは、血管と筋肉が収縮すること。そして、血液中の赤血球に酸素が結びついて全身に酸素を運ぶわけですけど一酸化炭素の方が赤血球との結び付きが強い。これにより、タバコをすうと酸素の運びが悪くなる。この影響は、1日くらいで半減するといわれている。
というわけで、レース前日からは意識的にタバコ控えました。

ランとお酒のメカニズム

お酒も毎日飲みます。ビール最高。ビールって良いよね。ビールに人生の意味を教わったといってもいい。
アルコールもランに良くないのはなんとなくわかるが、なんで良くないのかはわかってなかった。けど、今回、ちゃんと考えてメカニズムを理解した、つもり。
まず実感として、お酒飲んだ後は筋肉つりやすい。お酒を飲んで海に入ったサーファーが溺れるという事件がたまにありますが、あれは判断力が鈍ったからでもなく心臓麻痺になったのでもなく、思いがけず筋肉がつって動けなくなるからだと思う。アルコールによる利尿作用で過剰にカリウムが体外に排出されてしまうから、らしい。
あと、肝臓。ここでハンガーノックの話。マラソン攻略の重大な課題のひとつ、ハンガーノック a.k.a. 30kmの壁。ようするにエネルギー源である糖分の枯渇。糖分は筋肉中と肝臓に貯まっている。まず筋肉中に貯められているのが使われて、不足してくるとバックアップとして肝臓に貯められていた糖分が運ばれて使われる。カーボローディングというのは、ここにできるだけ多くの糖分を貯めておく作業。アルコールを分解するのは肝臓だから、アルコールを摂取すると肝臓が疲れるし糖分の貯蓄量が減る。これにより、アルコールをとっているとハンガーノックが早くなる。
とうわけで、レース前日はビール我慢しました。

ハンガーノック対策

ハンガーノック対策を真面目に考える、というのが今回はじめてやったことのひとつ。いままではハンガーノック対策とかチートだと思ってた。ガーッと食ってガーッと走る、力尽きたらそれまでよ、そういう勝負だろマラソンなんて。と思ってた。でも真面目にサブスリー目指すなら、そんなこといってる場合じゃないなと。科学技術による解明の恩恵は受けるべきだ。イノベーションの末席を汚す特許屋として。
というわけでハンガーノック、糖分の枯渇。よくいわれる「一歩も脚が動かない」というのを体験したことがないのでハンガーノックなんてなんなら都市伝説だと思っていたけど、エネルギー切れと考えれば30kmの壁のことかと納得。それなら身近な体験だわ。あれはハンガーノックなんだな。あと走っていて疲れてくると意識が「なんでこんなことやってんだろ」モードに入ること、ロングのトライアスロンのバイクパートの途中で眠くなること、あれもハンガーノック。血液が低糖状態になり、脳への糖分供給が減って集中力が切れる。神奈川マラソンはエイドの水だけでやりきったんだけど、この後に試しに30km走を水分も何も一切無補給でやってみたところ、20kmでパタッと脚が動かなくなった。おおこれか。これハンガーノックか。納得。それではセオリー通りに補給してみよう。
ここで、時間経過に応じた糖分燃焼と脂肪燃焼をおさらい。

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青い線が脂肪燃焼、赤い線が糖分燃焼。運動直後は主に糖分の燃焼によってエネルギーが供給されるけど、だんだん脂肪が燃え始め、20-30分くらいで脂肪燃焼が糖分燃焼を上回る。この転換点までがキツイが、この後は楽になる。これがランナーズハイの正体。よく「ダイエット目的で運動するなら20分以上運動しないと脂肪は燃えない」といわれるのもこういうこと。たかが数時間の運動で脂肪が枯渇するということはないが、糖分は使い続けると枯渇するので脂肪を燃やす省エネモードに入る。ただし、省エネモードに入った後も糖分が全く必要ないわけではなく、脂肪を燃やす潤滑油として多少必要。事前の体内の蓄えだけでフルマラソンを走り切る糖分は賄えないので、どうしてもレース中に糖分を補給する必要がある。

というわけで、今回は糖分補給の定番、shotzを4つ用意。約10kmごとに1つ摂る計算。

あとタンパク質。これも摂りたいところ。タンパク質(プロテイン)はトレーニング後に摂ると超回復を促すが、運動前に摂ると筋肉の破壊を和らげる効果がある。タンパク質は水に溶かして飲む粉末や固形のものが多いが、水なしでレース中に走りながらでも飲めて、かつそんなにむせなさそうなのを探した。これ。

明治 ヴァーム顆粒 グレープフルーツ味 4g×14袋

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前回のフルまでは、エイドに停まると時間をロスるのと自分のタイミングで補給できないのを嫌ってウェストポーチに水やゼリーを背負ってレースを走っていたんですけど、今回はできるだけ身軽で走るためにウェストポーチはしない。パンツのポケットにshotz4つとプロテイン3つをいれて走る。パンツはモンベルのこれ。

前の右左と、右後ろにファスナーつきのポケットがついてるので、補給アイテムは分散させていれておく。

レース戦略/ネガティブスプリット?

前半おさえて後半でペースを上げるネガティブスプリット、それを目指したことが私にもありました。でももーいーよそんなの。無理無理。ちゃんと調べてみれば、結局のところエリート選手でもネガティブスプリットでPBが出るのは何回かに一回の相当調子の良いときだといわれている。そんなエリート選手の真似してもしょうがないだろ。最初から突っ込んで、どこまでペース持つかの勝負。撃沈上等、ポジティブスプリット上等。怯んだら負けだ。

装備

  • グラサンなし、キャップなし。ランニングタイツとかはしない、テーピングもしない。したことない。
  • Tシャツ。パンツはあれ↑
  • 靴はこれ。

靴もあんまりこだわらない。なんとなく適当に軽そうで安いやつをポチる。あんまりモノに拘るといろいろ面倒。

  • アームウォーマー
    Tシャツだけだと寒そうだけど長袖やウィンブレ来ちゃうと暑そうなので、アームウォーマーを初めてゲット。

  • GPSウオッチ
    いま思えば、GPSウオッチを導入したのは大きかったですね。前回まではGPSウォッチどころか時計もせず、時間とかペースとか関係ねえ、余力があれば全力でやるだけだ、とか思ってたんですが、もうちょっと科学の恩恵を受けて、クレバーにやってみようかと。ラップタイムも心拍も測れるGARMINGPSウォッチをゲット。すごく便利。

心拍

というわけでGPSウォッチをゲットして始めて心拍測れるようになったので、測ってみた。けど、よくわからん。セオリー的には最大心拍の80%くらいで走るのが良いらしいけど、神奈川マラソンのときも100%MAX180で振り切った状態で60分。よくわからないので、考えるのを止めた。はなももでも平均95%の170の状態で3時間でした。やっぱりよくわからんw

目標タイム

サブスリーを意識。キロ4:10をキープして、どこまで押せるかの勝負。練習の感じだと、たぶん30kmまではこのペースで持つ。あとはハンガーノック対策がどこまで功を奏するか。まーサブスリーを意識しつつ、結果3時間ヒトケタ出せれば御の字かなと思ってはいた。

当日のレース運び

当日は神奈川の南方から、朝早い電車に乗って北上。
ブロックはC。それでもスタート直後は団子な感じでキロ4:30-5:00くらい。焦らずアップのつもりでついてく。1km超えたあたりからちょっとバラけてきて、ガチにサブスリー狙ってる風のキロ4:10集団が出来始める。集団の中で巡行。エイドは全部よる。食えるものは食う。バナナバナナ。
20kmくらいまでは順調にキロ4:10をキープ。この辺からペースあげてさらなる勝負に出る人や、落ちていく人も出始めて集団がバラついてくる。私もちょっと疲れてきた。ガーミンでペースを見ながら粘る。
30km近くで、なんだかんだやっぱり30kmの壁。ハンガーノック。遅れ始める。GARMINをチェックしながらだましだまし走る。この辺でレース開始時からの平均ペースが4:20より遅れる。キツイ。変に無理したら動けなくなりそうな感じ。このあたりでサブスリーは無理だわと感じる。やはりフルマラソン、あまくない。でもやれるとこまでやる。
GARMINチェックしながら、なんとか1kmラップが5:00より遅れないようにキープ。 35kmくらいから、もうつりそうな感じ。だましだまし走る。
なんとか40kmくらいまでくる。この辺で3時間ヒトケタは確信。41kmくらいのところまできて、よーし最後の勝負や、と思ってスピードあげたら、脚つったw やべーと思って片脚引き摺りながらだましだまし身体を前へ。なんとか止まることなくフィニッシュ。おつ!

ラソン練習はPDCA

Plan, Do, Check, Act。計画し、実行し、結果を分析して、改善案を練って、計画し、また実行する。これの繰り返し。
これをやるのに、文章にしてブログに残しておくというのはけっこう良い。どういうつもりで何をやったかって忘れちゃうので、このときはこういう準備をしてこういうメンタルでこういう結果だったんだな、というのが思い出せるように記録してあると、時間たってからまたやるかと思って次の対策を立てるのに役立ちます。文章で残っていちおう人に読まれると思うとそれなりに改めて考えてまとめようとしますしね。

次レース

湘南国際走れたら良いなと思ってますけど、どうですかね、ちょっとどうなるかわかんないです。最近は少しトレイルの世界に足を踏み入れたりしていて、山はすごく楽しいですけどレース出るかっていうと微妙です。ハセツネとかUTMFとか憧れますけど、夜寝ないのはキツイですね。夜は寝たい。でも来月のUTMFは魑魅魍魎の世界をみてみようと、A2エイドでボランティアやらせてもらうことになりました。走る方、頑張ってください。
あとマラソンは根詰めてやるとぶっちゃけ健康というよりも不健康になってる気がするんですけど、トライアスロンは健康になる気がします。スイムとバイクとランをバランス考えながらやるというのはやっぱり良いですね。毎年いってる横須賀トライアスロンには今年も出ようと思ってます。

今回の練習期間中、この動画を何回も観ました。鏑木さんまじかっこいいです。

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