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特許明細書は技術文書か?法律文書か?

というテーマには、2007-09-11のエントリ(おっつ、9.11か・・・)でこうかいている。

で、特許明細書なんですが、これは技術文書なんでしょうか?法律文書なんでしょうか?

というのは、ずっと悩んでてまだどっちつかずのアイウォンチューな態度でいるところで、
この問題は、「ソフトウェア特許はなぜプログラマに信用されないか?」というテーマにも関わっている。

私はSIにいたときに弁理士試験の勉強を始めたのですが、ソフト開発をしながら傍らに机上の勉強をしていたときは、公開公報とかを読んで、なんだこの意味わかんねえ文章は、と思っていました。俺が明細書かく側に立ったら、もっと技術者にわかりやすいように書くぞ、と。このわからなさは、技術者に特許制度が信用されないことの一因なんじゃないか?とまで思っていて、上のエントリもたぶんそういう気持ちで書いていたと思う。

ですが、一年半ほど実務をやってみて、考え方が変わってきた部分があります。

「明細書とは、技術文書なのか、法律文書なのか?」というとき、どっちもだよ、と言ってしまうのが理想的な正解なのかもしれませんが、最近は「法律文書(権利書)である」というのが正解なんじゃないか、と思うようになってきました。

法律家の言葉遣いと技術者の言葉遣いが違うのは当たり前ですが、権利化のプロセスは法的手続によって行われますから、法律家よりも技術者に向けた文章というのは権利化、権利行使には不利です。特許事務所にやってくる依頼者の望みは技術の開示よりも権利化、権利行使ですから、「技術者にわかりやすい」と「法律文書として明確に、解釈に疑いが少ないように」がトレードオフになったとき、明細書として優先すべきなのは後者であって、わざわざ権利化に不利な文章かくなんてナンセンスです。技術者が技術者に向けた開示をしたいんだったら、学会で発表したり、ソフトウェアならネットにソースを公開したりしてしまえば良い。特許制度の使命は当業者に技術を開示することだなんて、特にソフトウェアに関しては建前でしかないんじゃないかと思っています。実際、プログラムかくときにGoogleで探したサイトを参考にすることはあっても、特許電子図書館に参考技術を探しにいくことなんて、ないですよね?
というわけで、特許明細書は、技術者よりも法律家に向けて、権利化に有利で、最終的には裁判で勝てるような言葉遣いでかくと割り切るのが正解なんじゃないかというのが最近思っていることです。最高裁の判決文なんか読んでるとものすごくかっちりした法律文書ってイメージを受けますが、最終的にはああいう文章構成をすることが理想なんじゃないか、ということですね。

まあ、また考えが変わるかもしれません。