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色の商標って例えばビアンキのチェレステ?

4月1日から、「新しいタイプの商標」という、「新しくなくなったらどうするんだろう」という余計な心配をしてしまう名前でよばれている商標の登録制度の運用が開始されました。巷では、久光製薬のテレビCMなどでおなじみの「ヒ・サ・ミ・ツ♪」のメロディーや、大幸薬品正露丸でおなじみの「パッパラパッパ♪」のラッパのメロディーなどが出願されたというのがチラチラ話題になっているようです。

http://mainichi.jp/select/news/20150408k0000m020086000c.html

音の商標もそうですが、色の商標というのも認められるようになりました。

玩具大手「タカラトミー」は列車を走らせて遊ぶおもちゃ「プラレール」の線路の色の青を出願。同社は59年の発売時からレールにこの色を使っており、広報担当者は「プラレールといえば青色。登録でブランドイメージをさらに向上させたい」と強調する。セブン−イレブン・ジャパンも、コンビニエンスストアの店舗に使うオレンジ、緑、赤の3色の組み合わせを出願した。特許庁の審査を経て、数カ月後に順次登録される見通しだ。

しかしこういう個別の出願って、特許庁守秘義務があって公表できるわけないですから、各社自ら発表してるんだと思うんですけど、わざわざ発表するのって大丈夫なんでしょうか。敵に塩送るようなもんというか、ヒサミツとかはほぼ確で登録できるんでしょうけど、青のプラレールとか微妙な気がします。競合他社がそんなん知ったら情報提供だか登録異議申立だかの準備はじめるような気がしますけど。

というのはさておき、知財職に従事するトライアスリートビアンキ乗りとして、ビアンキのチェレステって色の商標として登録されるのかなとフト思うわけです。で、まあ出願したら、され得るんじゃないですかね。しない気がしますけど。

ビアンキのチェレステはこれです。この青のような緑のような独特の自転車の色、この色をチェレステといいます。

チェレステ(Celeste)というのはイタリア語で碧空とか天空とかいう意味らしく、ビアンキ創業者で自転車職人のエドアルド・ビアンキが19世紀に当時のイタリア王妃のために自転車を制作して献上して自転車の乗り方を指導した際の、王妃の美しい目の色、という伝説があります。いい話ですね。この色をチェレステと呼ぶこと自体がビアンキ独特の文化だろうと思います。ウェブなんかでのカラーコードはPantone 333(#54dbc2)(C38/M0/Y27/K0)(■■■■■)ということになってるようです。

この色は自転車の需要者にとって、ビアンキだという識別力を発揮しています。街中でみかけたロードバイクやクロスバイク、マウンテンバイクなんかの自転車のフレームがこの色なら、ああビアンキだな、と思います。フレームの「Bianchi」の文字やマークがみえていなくても、です。

例えばウチの4歳娘さえも、もはやこの色を「チェレステ」として把握していて、先日、花見にいった時にテントの色をみて「このテント、チェレステだね」といっていました。さすがビアンキ乗りの娘。

まあさすがに指定商品「テント」についてチェレステカラーの「色のみからなる商標」は識別力なしだと思いますが、指定商品「自転車」についてチェレステカラーの「色のみからなる商標」は識別力あると思います。3条2項の適用を受け得ると思います。

とはいっても、他のメーカ(ルイガノとか)で似たような色の自転車もありますし、普通のママチャリでもこういう色のはあります。そういう意味では普通の色であるともいえると思いますから、26条の適用があったり商標的使用態様じゃなかったりして、権利行使はできないというか、し難いだろうなと思います。

しかし色ってのは、組み合わせならまだしも、一色ってのは権利化してもほとんどの場合に権利行使が難しいような気がしますが、どうなんでしょうか。

ちなみにこの自転車の色をチェレステと呼んでるのは独創性もあるし識別力もあると思いますから、指定商品「自転車」の商標「チェレステ」をビアンキが出願すれば登録できると思いますけど、プラットパットをぷらっと叩いてみると、してないですね。さすがに「ビアンキ」については商標登録されてます。商標登録「ビアンキ」の名義人は「グリマルディ・インドゥストリ・アクチボラゲット」となっていて、スウェーデンの、サイクルヨーロッパの親会社ですね。

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余談ですが、例えば元切込隊長のやまもといちろうさんのブログ背景の緑色も識別力あると思います。あのブログは業としてやってるといえると思いますし、役務の限定の仕方が難しそうですけど、ブログ背景とかでうまく特定して「色のみからなる商標」の出願したら登録され得るんじゃないですかね。しないでしょうけど。