It's Not About the IP

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インターネット時代の知財を再定義する試みβ(1)

ソフトウェアエンジニアをやっていた15年前、プロプライタリなソフトウェアを尻目に先端いきまくってるOSSがカッコよく見えて、インターネット/ソフトウェアに関する知財制度は考え直されるべきだ、と思ったのがもともと知財に興味をもったきっかけでした。

なんやかんやで大学院に通い始めたんですけど研究計画のためにつくったスライド晒す。

というわけで先行研究としての論文を探して読み始めているんですけど、なるほどー。インターネット時代に特許制度が馴染んでないと考えている人はアカデミックの世界にも確かにいるんですね。知らなかった。あの先生とかあの先生とかお名前は聞いたことありましたけど、けっこう尖ったこといってるんですね。面白いっス。

けっこう色んなところで色んな方が色んなこといってるので、色々インプットする前に、私の今の粗っぽいそもそもの思いみたいなものを忘れないうちにメモしておきます。

まだ知識も実務経験も積む前の12年前にほとばしるように書いたエントリも参考まで。

なぜいま知的財産がオモロイのか?(3) - It's Not About the IP
なぜいま知的財産がオモロイのか?(2) - It's Not About the IP
なぜいま知的財産がオモロイのか?(1) - It's Not About the IP

うーん、なるほど、こんなことを考えていたな。わかるわかる。わかるし、今考えていることは確かにこの延長にもあると思うけど、違うところは違うな。たぶんこのときに考えていたのはどちらかというと、インターネットとIP(知財)による「フラットな社会の実現」みたいなことだと思う。でも、例えばお金っていうか金融ってのはまさにそれなんだよね。地球を削らなくても、人間にとって価値があるお金を増やすことができる。それはやっぱり金持ちがますます金持ちになり貧乏人はますます貧乏になるシステムで、ある程度は虚構だしファックなマネーゲームだけれど、「地球を削らなくても価値を増やす、経済を回す」という問いには答えているんだと思う、たぶん。錬金術というのはお伽噺ではなく完成していたんだな。

どうなんだろう、めっちゃ現実に戻りますけど、いまソフトウェア特許の実務の世界で何が困るかっていうとですね。特許ありすぎなんですわ日本。USやEPがソフトウェアの特許に関して大きくアンチパテントの方向に舵を切った逆をいくように、日本では特許が量産されてる。時代遅れのプロパテント。特許庁代理人にとっては権利化数も増やして各々の権利も強くした方が仕事が増えて良いんだろうけど、そうじゃないでしょ。

ほらほら中山先生もいってますよ、中山先生のいうことはいつも正しい。

"知的財産制度自体が主役なのではなく、産業や文化の担い手が主役であり、知的財産制度はイノベーション促進の脇役であるという点を忘れてはならない。"
中山信弘「知的財産立国の更なる発展を目指して」 ジュリスト(No.1405)2010.8.1-15 p.7

Jurist(ジュリスト)2010年 8/15号 [雑誌]

Jurist(ジュリスト)2010年 8/15号 [雑誌]

そのプロパテント、少なくともソフトウェアの世界では、特許庁代理人しか得してなくないですか。なくなくなくなくなくないですか。

だって実務の世界で切実なのは自分が特許とることよりも、他者の特許を踏まないことですから。誠実に事業活動しようとする産業の担い手である企業にとって、自分が権利とれることよりも他社特許の監視コストが増えるっていう方が深刻なんですよ。わかるかな。

そして一方で、スタートアップが特許とるのは良いことだと思いますけど、ぶっちゃけて言いますけど、ソフトウェアの世界で、どーしても回避できない特許、またはどーしても潰せない特許、っていうのは、ない、とはいわないですけど、すごーーーく稀ですよ。あ、ここでいってるソフトウェアってのは、あんまり技術技術してない、ビジネスモデルっぽいやつのことですよ。ハードウェアとか医薬品とかはもちろん別ですよ。

ちなみに控えめに言いましたけど、個人的に言えば、ない、ですよ。絶対に非充足の理屈が立てられないと思った他社特許。ない。事務所で代理人としてプロフェッショナルに鑑定やってた時代から、違う意味でよりシビアに他社特許をみるようになった現在に至るまで。

というわけで、USやEPがソフトウェアの特許に関してアンチパテントの方向に舵を切ったのは上手くやったなって感じですわむしろ。うらやましい。とかいっちゃいけないのかもしれないけど。

(つづく)