It's Not About the IP

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人はなぜ創作するのか

(以下では、主に著作権や特許などの創作に絞った知的財産(権)をIPということにします)

IPとはいったい誰得で何得なのかを考えるにあたって法哲学まで遡って本や論文を読んだりしてますます思考が拡散している昨今でして、気が付いたら結局のところ人はなぜ創作活動をするんだろうか、ということについて考えています。理由として以下が考えられるでしょうか。

1.つくることがたのしいから
2.他人と共感したいから
3.誰かにほめられたいから
4.有名になりたいから
5.お金がほしいから

例えば私の場合で考えてみると、(それを創作活動というのもおこがましいですがここではそういう広義のものを含めて創作活動と考えることにします)

A このブログをかくのは、主に1.と2.ですね。「かきたい」というのがまずあって、次に「だれかが共感してくれたりしてくれたらうれしいな」というのもあると思います。3.もあるかもしれない。4.5.はないですね別に。

B 職務として法律判断の意見や見解を書いたり、契約書をおこしたり、プレゼンのためのパワポをつくったりプレゼンをしたりするのは仕事だからやってるという意味で俄然5.です。3.もあるかもしれない。1.2.はないとまではいわないですが意識していないです。

C 前職で特許明細書をかいていたときや、前々職でプログラムをかいていたときは、これも5.ですね。ただ1.もけっこうあったような気はします。いかにエレガントかを試行錯誤してコードをかくのはたのしい。そういう意味では3.もありましたね、クライアントがいる職務では、エレガントなコードがかければお金を払ってくれる上にほめてくれることもあります。

なんでこんなことを考えているかというと、IPがなければ創作意欲がなくなり創作活動がなくなるというテーゼに対して、ハイエクなどのリバタリアンが「そんなわけねーだろハゲ」といっているからです。いえ、ハゲとはいっていません。

リバタリアンたちがいう、「IPがなければ創作意欲がなくなるなんてウソ」というのは本当でしょうか。

リバタリアンたちがそういうのは色々理由があるでしょうが、その理由の一つは、IPというものがない時代から創作活動は行われてきた、ということです。シェイクスピアが戯曲をかいたときもベートーベンが作曲をしたときにもIPという観念はなかったが、それでも偉大な作品はうまれてきたし、太古の自体から踊りや劇や絵画や彫刻は創作されてきた。人間にとって創作というのは(たのしいから)自然に行うというわけです。

本当かな。

シェイクスピアとかベートーベンとか昔の偉大な創作者って、元々ものっそい金持ちの子だったり、パトロンがいたりしたんですよね。そういうんじゃなくて、日本での小説家とかも一昔前は金持ちで遊び人の道楽だったのが、著作権の発展によって、貧乏でも小説家になって一攫千金みたいな例がでてきた。そうでなければうまれなかった偉大な小説というのはあると思います。

うーむ。しかしそういう風にしてうまれてきた作品というのはある意味不純で、本当に偉大な作品というものはIPなんてなくても表現したいという迸る情熱からうまれてくるものなんだといえばそうなのかもしれない。どうなんだろう。自分のリンゴは他の誰かに食べられたらなくなるけど自分の著作物を誰かにコピられても自分の著作物がなくなるわけではない。それでも他人のコピる行為を禁止する理由(他人の自由を制限することを正当化する理由)はなにか。と考えると、その著作物からうまれる経済的利益を独占できなくなる、という話だけど、それってつまり上記A、B、Cでいうと、、、どれにもあてはまらないな。うーん。

D 米津玄師さんなんかがニコニコで曲を発表してたのも、最初は1.で、2.3.なんだろうと思う。これはたしかにIPがなくてもうまれていたような気がする。

E または例えば、アメリカのスラム街の黒人が「ここから抜け出すためにはNBA選手になるかラッパーになるしかない」といってラップをするのは4.や5.が主で、次に1.2.3.もある、という感じだろう。これはやっぱりIPがなければうまれないんじゃないだろうか。

F よくわからないが最近のお笑い芸人の騒動をみていると、ああいう人たちの行動原理っていうのもけっこう4.や5.が主で、次に1.2.3.がくるという感じなのかなと思ってしまう。

そしてこれが本題なんですけど、

G OSS活動に貢献する人、っていうのは、元々はもっぱら1.なんだよなあ。最近は職務としてやってる場合も多いからややこしいですけど。GNU/Linuxがうまれた経緯っていうのはもっぱら1.だった。

だとすると、リバタリアンがいってることは、正しいんだよなあ。
しかしやっぱりあれだな、Gがいえるのでその線で考えきることができれば思考の道筋が開けそうなもんだけど、私自身もヒップホップに人生を救われたと思っているので、Eがある以上、このリバタリアンの議論は素直に受け入れちゃいけない気がする。