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OSSライセンスを紐解く:GPLと2020民法大改正

120年ぶりの民法大改正

2020年4月、120年の時を超えてついに民法が大改正されます。

2006年に法務省が改正を打ち出す
→2014年に最終案を発表
→2017年に国会で可決
→今年いよいよ施行

という平成令和を股にかけたビッグプロジェクトです。

ここに、「定型約款」という概念がめでたく法律の条文として組み込まれることになりました。この改正によって、GPLApacheライセンス、MITライセンスなどのOSSライセンスの解釈や法的取扱いがどう変わるかを考えてみます。

OSSライセンスの法的性質

OSSライセンスというのが法律的にどういう性質のものなのか、というのはそもそも決着がついていません。決着がついてないというのは、揉めた場合に裁判所がどう判断するのかわからないという意味です。例えば、OSSライセンスが契約であるとすれば、コピーレフト条項は債務として発生するので強制執行が可能ですが、解除条件付の権利不行使宣言の意思表示としての単独行為であるとすれば、コピーレフト条項を強制執行させることはできないでしょう。この違いは、MITライセンスなどのパーミッシブ系で相手側に不作為を要求するだけのOSSライセンスではあまり変わらないかもしれませんが、GPLなど相手側に作為を要求するコピーレフト系のOSSライセンスでは、その効力が決定的に変わってきます。

定型約款とはなにか

改正民法の548条の2~民法548条の4に、定型約款についての条文が入りました。この条文に当てはまれば、OSSライセンスは契約としての効力を持ち得ることになります。

第五百四十八条の二 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。

結論からいうと…やっぱり関係なさそうですね (汗
これは、この要件に当てはまれば契約とみなしますということではなくて、そもそも当事者間に何らかの契約関係があることを前提として、約款の内容がこの要件に当てはまれば契約の内容に組み入れるものとみなしますよ、という話のようですね。というわけで、上述したOSSの取り扱いの違いは、そもそも契約が存在するかどうかという問題なので、そこに対して影響があるものではなさそうです。

とりあえずこちらからは以上です。