サトシナカモト。彼が書いた1本の論文が、人々をインターネットに駆り立てた。
「探せ!この世の全てをそこにおいてきた。」
世はまさに大仮想通貨時代!!
ドーン!!!(雑)
というわけで、盛り上がってますね仮想通貨。
投資(投機)のことはよくわかんないですけど、それはそれ、踊る阿呆にみる阿呆、我らそれを傍から嗤う阿呆、最先端技術ウォッチャーである特許屋として、技術としての仮想通貨にはすごく興味があります。「ブロックチェーンはインターネットに匹敵する発明」といわれる一方で、「こんなのは単なる流行でそのうち死ぬ運命」ともいわれますが、インターネット黎明期があってインターネットに熱狂してるヤツなんてバカだと言われてた時代にエリック・シュミットが言ったっていうじゃないですか、「インターネットが負ける方に賭けるのは愚かだ」って。仮想通貨もどうなるかわかんないですけど、負ける方に賭けるのは愚かなんじゃないですかね。
ナカモト論文の登場
そんなわけで、ここでちょっとテクノロジー史としての仮想通貨、ブロックチェーンを振り返っておきましょう。
まず、サトシナカモトを名乗るアカウントがメーリングリストに投げた論文がすべての始まりだと言われています。ここでアーカイブがみられます。
2008年、metzdowd.comというメーリングリストホストの中にあったcryptography(暗号理論)というコミュニティに、"Bitcoin P2P e-cash paper"というタイトルのメールが投稿されました。そのメールにはリンクURLが貼られていて、リンク先にある論文のpdfファイルにはビットコインとブロックチェーンのアイデアが書かれていた…、というわけです。
Bitcoin P2P e-cash paper
Satoshi Nakamoto Sat, 01 Nov 2008 16:16:33 -0700
I've been working on a new electronic cash system that's fully
peer-to-peer, with no trusted third party.
The paper is available at:
http://www.bitcoin.org/bitcoin.pdf
ビットコイン P2P電子貨幣に関する研究
サトシ ナカモト 2008年11月1日(土)午後4時16分33秒
フルP2Pで、第三者認証機関の不要な、新しい電子貨幣システムについて考えています。
論文はこちら
http://www.bitcoin.org/bitcoin.pdf
解決不可能といわれていたP2Pビザンチン将軍問題に現実的な解を与えるものとして、今や世界最高級の頭脳たちがこぞって熱狂するブロックチェーンとコンセンサスアルゴリズム。その論文が初めて世界に撒かれた時は、さぞかし絶賛され熱狂をもって迎えられたに違いない…と思ったら、そうでもない。レスなし。そして1日以上経ってやっと 初めてついたレスは、「そういうのあったらいいよな。でも、お前がいってるそれ、スケールしなくね?」みたいな感じ。笑える。
サイファーパンク
ナカモト論文が投稿された"cryptography@metzdowd.com"というメーリスは、サイファーパンクとよばれる技術者のコミュニティに端を発するものでした。サイファーパンクというのはもちろんサイバーパンクに暗号学を意味するサイファーをもじったもので、脳がコンピュータに接続されるSF世界にマジに憧れる天才的かつ急進論的な技術者の集団です。電気羊の夢を見る彼らの源流にいるのはこの人、天才暗号エンジニアの教祖・ジョン・ギルモア。
このいかにも西海岸的というかヒッピー的なヴァイブス…この雰囲気はどこかでみたことがあります。そう、この人は電子フロンティア財団の創設者で、GNUプロジェクトの人なわけです。GNUといえばもちろんこの人、、、
でたー!尊師・RMS。
まず西海岸のイカれたヒッピーたちが、バカだといわれながらインターネットテクノロジーに熱狂し、インターネットという仮想的な土地を作り上げた。そしてSNSが出来て、インターネットという土地に大量に人が入ってきた。そこで、インターネットに土地と人が揃ったところで、インターネットならではの、インターネットでこその通貨をつくろうというのが仮想通貨技術なわけです。ナカモト論文や仮想通貨技術、ブロックチェーン技術というのは、そもそもがインターネットとコンピュータテクノロジーのちからで世界転覆を企むヒップな革命軍の運動であり、権力をきらうインターネット国の独立戦争なんですね。
シルクロード
「仮想通貨はマネーロンダリングや犯罪に使われる可能性がある」なんていわれたりしますが、順番が逆です。仮想通貨というかビットコインは、むしろ犯罪に使われることによって広まった。2011年、アメリカにシルクロードとよばれるサイトが誕生します。これは普通のブラウザからはアクセスできないディープウェブと呼ばれるインターネット空間にあるサイトで、違法薬物や盗んだクレジットカード番号、殺人依頼などの犯罪取引が行われていました。ここでの取引は、ビットコインのみによって可能だったのです。
シルクロードは2013年に連邦捜査局に摘発されて憂き目にあいますが、この犯罪取引によってビットコインは爆発的にユーザを増やし、ユーザ基盤が築かれたわけです。
P2P/インターネットテクノロジーの夢
ナカモト論文でも謳われているP2Pというのは、まあざっくりいうと、複数のコンピュータにクライアントとサーバという主従関係があって動作するのではなく、同じ機能を持つ複数のコンピュータが対等に通信しあって動作するシステム形態です。これは必然的な権力者のいない中央集権的でない構造で、電気羊の夢をみるヒップな彼らはこういうのが大好きで、世界はそうあるべきだと信じているわけです。 昨年、「インターネットは当初目指したものではなくなってしまった」というネットワークエンジニアの嘆きを紹介する記事がバズっていましたが、彼らにとってP2Pは正義なのです。少し前、マストドンが一般ユーザには(ツイッターと同じじゃね?なんで囃し立ててんだ?)として捉えられることが多かった一方で、エンジニア界隈で熱狂的に支持されたのは、マストドンがP2P的な技術世界観で組み立てられたものだったからです。
P2PアプリケーションといえばWinnyです。Winnyが流行った時に、個人情報のファイルとかが漏れ出して、いったん漏れたら消せないというのがすごく話題になりました。あの「消せなさ」は、ブロックチェーン技術における「セキュリティの高さ」につながります。いったんブロックに記述されたら、消したり改ざんしたりできないというわけです。P2Pにおけるこの「消せなさ」は「セキュリティの高さ」であると同時に、Winnyで体験したようにすごく怖いものでもあります。北斗の拳で描かれた世紀末世界では腕力の強弱のみによって優劣と秩序がうまれていましたが、電気羊が夢をみる世界は、腕力に代わってコンピュータスキルの強弱のみによって優劣と秩序がうまれる世紀末世界なのかもしれません。
スマートコントラクトからワールドコンピュータへ
P2Pテクノロジーに新たな地平を開いたブロックチェーンシステムを、畳み掛けるようにさらなる次元へ押し上げる若き天才が登場します。ヴィタリック・ブテリン。
あれ、なんかちょっと前までいかにもギークというかナードという感じのヒョロい青年だったけど、ずいぶん雰囲気かわりましたね。実業家っぽい。筋トレした?
とにかく、彼はビットコインシステムがうまいこと動き続けている実績を見ながら、このブロックチェーンP2Pネットワークが、24時間365日、決して止まらないコンピュータシステムとして成立していることに気付きます。システムエンジニアリングの世界には「情報のCIA」とよばれる重要な3要素、"Confidentiality (機密性): 情報へのアクセスを認められた者だけが、その情報にアクセスできる状態を確保すること"、"Integrity (完全性): 情報が破壊、改ざん又は消去されていない状態を確保すること"、"Availability
(可用性):許可されたエンティティが要求したときに、アクセス及び使用が可能である特性"、というのがありますが、ビットコインシステムは、この3要素をほぼ完璧に満たすテクノロジーでした。
そこで彼は思いついてしまったわけです。このブロックチェーンP2Pネットワーク上で、コインなどのトークンだけではなくあらゆる情報、コンピュータプログラムさえも走らせる仕組みをつくれば、24時間365日、決して止まらずに動き続けるワールドコンピュータが出来上がるのでは…?
彼はこの着想から、ブロックチェーンP2Pネットワーク上
でコンピュータプログラムを走らせるスマートコントラクトというヒップな発想を実現し、イーサリアムという世界をつくりあげました。これはついに現れたビッグブラザーというかスカイネットというかマトリックスというかの誕生です。24時間365日、決して止まらずに動き続け、世界を覆い尽くすワールドコンピュータ。この先どうなっていくのか、ドキムネです。
これは止めることのできないものだ。人々が自由の答えを求める限り、それらは決して止まることはない!!
ドーン!!!(雑)
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