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知財業界人がカリフォルニアで運転免許を取る方法

知財業界人というのは基本的に新しい物好きのミーハーです。特許も著作権も商標も、その保護対象は要するにありきたりでない何らかのユニークさなのであって、そういった「ありきたりでなさ」を面白がるのが知財業界人の特性だからです。

そしてその「ありきたりでなさを面白がること」を文化的かつ商業的かつ社会的かつ経済的に世界で最も成功させた地域、それがカリフォルニアです。トップに憧れる世界中のエンジニアはシリコンバレーを目指し、エンターテナーはロサンゼルスを目指す。

つまり、全ての知財はカリフォルニアに通ずるわけです。知財の世界で世界を目指すならば、いつかはカリフォルニアで車を運転することになるでしょう。というわけで、最近カリフォルニア・ベイエリアで運転免許をとったので、カリフォルニアで運転免許を取る方法を記録しておこうと思います。

このエントリは、パテントサロンの「知財系 Advent Calendar 2022」に参加するものです。ここまでを読んで、勘の鋭い方はひょっとして、「…知財関係なくね?こいつさては、勢いで参加ボタンを押したもののネタに困って無理矢理こじつけているな?」と思ったかもしれません。正解です。

ゆっくりしていってね!!! - Wikipedia

カリフォルニアの運転免許について書いたブログはたくさん出てくるのでそっちをみてもらえれば良いのですが、それでもこのエントリを書く意義があると思ったことのひとつは、免許をとるとらないについての法的根拠を辿ったものが見当たらなかったからです。知財業界人というのは法律屋でして、法的根拠がわからないというのが気持ち悪かったので、いちおう調べてみたことを調べてみた範囲で記録します。

そもそもカリフォルニアの移動に車は必要か

カリフォルニアといっても広いのであれですが、サンフランシスコやロサンゼルスの都心of都心にいて都心内でしか移動しないというわけでもなければあった方が良いでしょう。電車やバスなんかで移動できるのは都心of都心だけで、ちょっと離れると車がないと不便です。

わりとほんとにこんな感じです。

レンタカー

ちょっとした出張や旅行にはUberLyft使えば足りると思います。Uberって日本にはないし、ちょっと前まではなんかちょっと怖いというか変な人がやってる場合もあるみたいな感じでしたけど、もう全然一般化していて気軽に日常的に使えます。街中やメジャーな観光地や人の多い住宅街なんかではいくらでも捕まえられると思います。

ただ、「シリコンバレー発祥の地」ヒューレットパッカードのガレージとか、

初期アップルでジョブズとウォズの作業場だったガレージとか、

こういうところをちょこちょこ移動して回りたい時にはやっぱり自分で運転する車があると便利ですね。

レンタカーなどでちょこっと運転するだけなら、日本の運転免許があればOKです。…というのはちょっとggると出てきますが、法的根拠を探してみました。これですね。

California Vehicle Code

カリフォルニア乗り物法、って感じでしょうか。ちなみにアメリカは州ごとに法律が違うので、他の州でどうなのかは知りません。

12500
(a) A person may not drive a motor vehicle upon a highway, unless the person then holds a valid driver’s license issued under this code, except those persons who are expressly exempted under this code.

→カリフォルニアでは運転免許証がないと車を運転してはいけません。ちなみに "highway" っていうのは高速道路に限らず一般道のこともいうみたいです。

12502
(a) The following persons may operate a motor vehicle in this state without obtaining a driver’s license under this code:
(1) A nonresident over the age of 18 years having in his or her immediate possession a valid driver’s license issued by a foreign jurisdiction of which he or she is a resident, except as provided in Section 12505.

→でも、カリフォルニアの非居住者で、居住地で発行された免許を持っている人は、運転して良いです。

435
“Nonresident” is a person who is not a resident of this State.

→「非居住者」っていうのは、カリフォルニアの居住者じゃない人のことです。

516
“Resident” means any person who manifests an intent to live or be located in this state on more than a temporary or transient basis. Presence in the state for six months or more in any 12-month period gives rise to a rebuttable presumption of residency.

→「居住者」っていうのは、カリフォルニアに住む意思を示している人のことです。12か月間以内に6か月以上州内に滞在した人は、とりあえず居住者ってことにします。

12504
(a) Sections 12502 and 12503 apply to any nonresident over the age of 16 years but under the age of 18 years. The maximum period during which that nonresident may operate a motor vehicle in this state without obtaining a driver’s license is limited to a period of 10 days immediately following the entry of the nonresident into this state except as provided in subdivision (b) of this section.

→非居住者が12502に基づいて運転できるのは、カリフォルニアに入ってから10日間に限定されます。

→→と、いうわけで、どういうことかというと、日本で発行された免許を持っている人が一時的にカリフォルニアにいる場合、カリフォルニアに入ってから10日間は、日本発行の免許を根拠として運転して良いってことですね。

国際免許証というのは翻訳文的な意味合いで持っていた方が良いかもしれませんが、少なくとも法的な条文上は必要ないということになります。

免許をとる

サンフランシスコ領事館が、「カリフォルニア州法は、「州内に住居を定めた日から10日以内に州政府の発給した運転免許証を取得しなければならない」旨規定しています。」といっています。

カリフォルニア州運転免許証取得情報 | 在サンフランシスコ日本国総領事館

これは、上でみた条文と、もうひとつこの条文を合わせると理解できます。

12505
(c) Any person entitled to an exemption under Section 12502, 12503, or 12504 may operate a motor vehicle in this state for not to exceed 10 days from the date he or she establishes residence in this state, except that a person shall not operate a motor vehicle for employment in this state after establishing residency without first obtaining a license from the department.

→12502、12504に当てはまる人は、カリフォルニアに居住地が確立した日から10日以内は運転して良いです。

→→居住者は、カリフォルニアで取得した運転免許をもってないと運転しちゃダメだけど、カリフォルニアに住んでから10日以内は運転して良いよ、ということですね。逆からいうと、サンフランシスコ領事館がいう通りの「カリフォルニア州法は、「州内に住居を定めた日から10日以内に州政府の発給した運転免許証を取得しなければならない」旨規定しています。」ということになります。なるほどなるほど。

筆記試験

カリフォルニアの居住者が車を運転するにはカリフォルニアでの免許をとらないといけない法的根拠がスッキリしたところで、運転免許センター、通称DMV(Department of Motor Vehicle)にいきましょう。DMVというのは聞き慣れないですが、実は我々の多くがDMVをみたことがあります。

『ズートピア』のキャラクターたちの魅力を紹介!特別映像 | cinemacafe.net

左上にDMVって書いてますね。ズートピアナマケモノが働いていたここがDMVです。アメリカではお役所的でなかなか話が進まない象徴とされる面倒なところなんですね。

ズートピア (字幕版)

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  • ジニファー グッドウィン
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それなりの覚悟はしておいた方が良いとは思いますが、私が今回免許をとるまでにお世話になった感じだと、特にみなさん普通にテキパキと働いていたし不満はなかったです。こんな映画とかで笑いものにされちゃったから改善したんですかね。

California DMV

筆記試験は、まあ日本で普通に運転していた方なら、ちょっと問題に解き慣れれば普通に合格すると思います。違和感があるのは赤信号で右に曲がって良いことくらいでしょうか。あと、「事故を起こさないために最も大事なことは、流れに乗って走ること」だと教わるんですね。日本だと制限速度内ならちょっと遅いくらいで文句言われる筋合いないみたいな空気があるように思いますが、アメリカではなんなら標識の速度を超えていても流れに乗る方が大事みたいな雰囲気です。これは実際走っていても感じますね。私が勉強したのは以下。

https://www.dmv.ca.gov/portal/file/california-driver-handbook-japanese-pdf/
カリフォルニア州運転者用ハンドブック(日本語版)。2019年のものですが、たぶんあまりかわらないんだと思います。

RISTAドライビングスクール - 筆記試験練習問題集 - 南カリフォルニア・サンディエゴ運転免許教習
問題集1

カリフォルニア州の運転免許(ドライバーズライセンス)の筆記試験問題 | どんと来い、ロサンゼルス留学
問題集2。やる度に問題が変わってくれるので模擬試験的に何度か試しました。

ハンドブックをひと通り読んで、問題集1をひととおり問いて、問題集2を何度か試してみて、いけそうだな、と思ってからオンライン試験を受けました。一日くらい勉強しましたかね。オンライン試験はChrome限定で、Extensionを使ってインカメラでカンニングしてないか監視されながら受けます。

https://www.dmv.ca.gov/portal/driver-education-and-safety/online-learning-and-tests/

ChromeのExtensionを入れる過程でエラーがでまくって挫けかけましたがなんとかやりきってDMVに行きました。オンラインで筆記合格したことを伝えて、写真とったり視力検査したりなんたらしてペラ紙の仮免許証をもらいます。仮免許証は、正規の免許を持っている人が同乗していれば運転して良いよという免許証です。普通はこれから誰かに同乗してもらって路上練習するわけですね。

実技試験

実技試験は自分の車でいくので、免許をとる前に車が必要です。日本では車を持つのは免許とってからだと思いますが、アメリカでは免許をとるより先に車をもっている必要があるわけです。なんとなくですがさすがアメリカって感じです。

仮免許証では理屈上、試験会場に車を運転していくためにも誰かに同乗してもらわないといけないわけですが、日本の免許もってれば一人で行っても良いみたいな話もネットで調べてたら出てきていて、よくわからなかったのでDMVに聞いてみたら、一人で良いっていわれました。そして実際、一人で行って受けられました。上記の法的根拠からすると、日本の免許を持っていても居住した日から10日を経過した後はダメな気もするんですが、まあこまけえこたあいいんだよってことみたいです。車社会のカリフォルニアでは16歳から運転免許がとれるので、DMVに実技試験を受けに来ているのはそれくらいの子供と同乗者としての親のペアという感じの人が多かったです。こんな感じ。

右の女の子が履いているズボンの柄はなんと、悟空とクリリンです。アメリカでのドラゴンボールの浸透具合は本物で、ドラゴンボールの柄の服を着ている子供というのは街中で本当によくみかけます。先日はサンクスギビングのパレードをテレビでみていたら、練り物の中に突然、巨大な悟空バルーンが出てきてビックリしました。日本の知財、すごいですね(無理矢理)。

試験会場は場所によって難易度が違うといわれていて、私はネットで調べたところでは難しめとされる試験会場が最寄りでした。だからなのか、他の優しめといわれる会場では2か月待ちくらいのところ、1週間後くらいで空きがあって、まあ大丈夫だろと思ってそこで受けました。受けてみて特に厳しいという気もしなかったので、普通に運転してる人が普通にやれば合格すると思います。といいながら私はちょっとナメ過ぎていてフラッと受けに行ったら、道に出て最初の右折で、右折直前に路駐されている車の死角にトラップみたいに潜んでいた出っ張った低い路肩に思い切りヒットして、一発アウトで終わりました。いやーけっこう落ち込みましたね。マジかーと思った。笑えたけどw

しかしまたすぐ1週間後に予約できて、念のためちょっと早めに試験会場に行って1時間くらい周りをウロウロ運転して道に慣れてから試験に臨み、2回目で無事に合格しました。ちなみに一度のアプリケーションで3回まで受けられると聞いていて、3回目まで無料で受けられるのかなと思っていたら、2回目は追加で8ドル払いました。

というわけで無事に運転免許をゲット。実技試験から10日くらいでカードが送られてきました。自由に車を運転できるとやっぱり色々世界が広がります。車だとベイエリアから太平洋側にも気軽に出られるので、日常的にカリフォルニアらしい風景を堪能しながら山を走ったりサーフィンしたりできるようになりました。

それでは引き続き、パテントサロン「知財系 Advent Calendar 2022」をお楽しみ下さい!

adventar.org