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OSSライセンスの"distribute"を「頒布」と訳すのは誤訳

前回のエントリでは、OSSライセンスでいう"distribute"を、日本の著作権法で手垢のついた「頒布」で訳すと誤解や混乱を生むので「配布」の方がベター、と述べた上で、実際に混乱している様子を辿ってみました。

著作権法の解釈的なところをもうちょっと突っ込んで書いておくと、日本の著作権法の文脈で話をするなら、OSSライセンスの"distribute"を「頒布」とするのは誤訳です。

著作権法でいう頒布権というのは、映画業界のロビイ活動によって認められた特別な権利で、映画フィルムの配給権を立法化したものです。普通の著作物、例えば本というのは一回売ってしまえば、それを買った人は、その本を他の誰かにあげるのも貸すのも自由です。これに対し、映画のフィルムの配給を受けた映画館が、その映画フィルムを他の映画館に渡したり貸したりするのを配給元のコントロール下に置くのが頒布権です。普通の著作物の譲渡権というのは一度適法に譲渡されると消尽しますが、映画の頒布権だけは譲渡によって消尽しないという、映画だけに特別に認められた超強力で特殊な権利なのです。

著作権法上の「頒布」は、こういう映画の頒布権を説明するための語で、特殊な色のついた語です。そういった語を他の状況に無理矢理あてはめようとすると色々とほころびが出ます。

著作権法 第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 十九 頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。

まず「貸与」という語が入ってるのが一見して特徴的です。映画フィルムの配給の話をしているからです。またここで「複製物」というのは、有形の物のことをいいます。つまり著作権法上の「頒布」は物理媒体を譲渡したり貸与したりすることをいい、インターネット送信は含まれません。 それは公衆送信(自動公衆送信、送信可能化)の問題です。

だから、OSSライセンスの"distribute"を著作権法上の「頒布」で説明すると、いくつかのOSSライセンスの許諾条件は、ソースコードを物理媒体にいれて配るのはOKだけど、AppストアやPlayストアで配ったりGithubでプロジェクトをforkするのはダメ、ということになってしまいます。

「頒布」でも一般的な用語として感覚的に伝わるんだとか、条件を満たさなくなったらterminateするんだから感覚的に貸与でも間違いじゃないじゃないかとか、そういう議論はあっていいと思いますが、既に「頒布」が定義されている著作権法のコード上に違う意味で無理矢理オーバーロードするのはエラーを生みます。

というわけで、やっぱり「頒布」に独自の解釈をするくらいなら"distribute"(≒convey)の訳は「配布」で統一していった方が良いよなと思う次第です。

OSSライセンスにおける"distribute"は「配布」か「頒布」か

結論からいうと「配布」がベターだと思う

OSSライセンスにおけるdistributionの日本語訳に「配布」と「頒布」があって、私は「配布」がベターだと思っている。日本の著作権法上では、頒布というと映画の著作物についての頒布(譲渡+貸与)の意味をもってしまうので、法律上つかわれていないニュートラルな語の方が良いと思う。GPLがv2からv3になるときにdistributeの語をconveyに置き換えたけど、これはdistributeだと国によって著作権法上の意味を持ってしまうので、知る限りどの国の法律でも使われていないconveyの語にしたという話で、色のついていない語で説明した方が良いのだろうなと。

ちなみにGPLv3の逐条解説やFSFの解説ではconvey(≒distribute)の訳語として配布を使っている場合が多い。「OSSライセンスの教科書」で上田さんは頒布といっていて、なんでかと思ったら八田さんのGPLv2参考訳がそうだかららしい。界隈でいうと姉崎さんも頒布といっているが、可知さんは配布といっている。八田さんの論文をいくつかみてみると、どうやら配布といってる場合と頒布といってる場合があるようだ。何らかの意味合いで使い分けているのかなとも思ったけど、よくわからない。

みんなOSSライセンスにおける"distribute"のことは「配布」っていった方が世界は平和になるんじゃないだろうか。

…と、以上でいいたいことは全部いいましたが詳しくいうと

OSSライセンスにおいて"distribute"という語はよく使われていて、GPLv2でもMITでもApacheでもBSDでもオープンソースの定義でも出てきます。GPLでは、"distribute"という語が米国著作権法で使われていることから、米国著作権法における用法に限定解釈されることを嫌って、v3をつくるときにどこの国でも使われていない"convey"に置き換えました。

GPLv3逐条解説におけるconvey(≒distribute)の説明(p.27)では、その定義を「プログラムを第三者に渡したり、あるいは第三者が入手可能な状態に置くこと」としています。うん。わかります。しっくりくる定義だと思います。

日本の著作権法では頒布という語が使われていて、条文上で定義されています。

著作権法 第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 十九 頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。

「有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡」までは"distribute"っぽいですが、「又は貸与すること」というのは違います。ここで貸与といってるのは、レンタルビデオ屋がDVDやCDを貸したりとか、図書館が本を貸したりとか、映画の配給会社が映画のマスターテープを映画館に貸したりすることをいっています。著作権法における頒布は貸与の意味が入ってこその頒布であって、"distribute"にあえて貸与を含ませる意義はないでしょう。

OSSライセンスにおける"distribute"を「頒布」というと、ここでいう頒布は著作権法でいう頒布とは違うのだと頭の中で変換しないといけないことになり、運用でカバーするバッドノウハウを生みます。

一般的な用語として、「頒布」を辞書でひくと「配って広く行きわたらせること。 「小冊子を-する」」 (weblio) となっていて、そういう意味ではまさに"distribute"なんだと思いますが、上述したような著作権法上の用法を無視するのはちょっとナイーブなんじゃないかと思います。「配布」が正しいという積極的な理由はありませんが、あえて色のついた「頒布」を使わなくていいじゃないかという消極的な理由はあります。

ちなみに、特許法でも頒布という語が使われています。配布は使われていません。

第二十九条 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
 三 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明

いわゆる刊行物公知というやつです。逐条解説によれば、ここでいう刊行物とは、「公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書、図面その他これに類する情報伝達媒体」をいい、頒布とは、「刊行物が不特定多数の者が見得るような状態におかれること」をいいます。これは"distribute"っぽいですね。

巷ではどう使われているか

なんとなくの流れとして、初期のGPLv2の訳やオープンソースの定義の訳が「頒布」となっていたし、「頒布」の方が「配布」よりもなんとなく専門用語っぽいので頒布が使われていたが、やっぱり頒布ってちょっと違くねと思いだした人たちは配布を使うようになってきたけど、引用とかでは頒布といわざるをえないときもあるし、、、という感じのように思います。

というわけで、「頒布」と「配布」と「拡布」が入り乱れている状態では混乱と憶測と誤解が広まるばかりで誰も得しないので、この乱世を鎮めるために、ここはひとつOSSライセンスにおける"distribute"の語は「配布」で統一し、定義はGPLv3逐条解説の通り「プログラムを第三者に渡したり、あるいは第三者が入手可能な状態に置くこと」として共通認識をつくっていくいうことでどうでしょうか。

「秘密特許」についておさらい

「秘密特許」制度導入についての報道があり、自民党の甘利議員が追認するtweetをしました。報道によると来年の法改正を目指すらしいので、これが本当ならもう「検討に入った」っていう段階ではなく案文できてるんじゃないですかね。

これがにわかに話題になっているので、ちょっとおさらいしておきます。ちなみに2008年にも産経新聞から秘密特許法案が国会に提出されるという報道があって、当時もちょっとブログにかきました。(これかいた私はまだギリギリ20代か…

どういう制度か

特許出願されたもののうち、国が国益にとって公開しない方が良いと判断したものについて、その内容を秘密にする制度。要するに軍事目的。秘密にするかどうかは国が決めるもので、出願人が請求するものではない(秘密意匠とは違う)。秘密になると出願人にとっては権利行使できず不利益なので、国から補償金がでる。いくつかの類型があって、こんな感じ。

特許付与型 審査して特許付与するけど、秘密期間中は公開されない。という意味では日本の秘密意匠の制度に近いか。 例) ドイツ、イタリア、スペイン、カナダ、中国、ブラジルなど

審査凍結型 秘密期間中は審査が凍結され、期間経過後に審査が再開される。 例) アメリカ、イギリス、フランス、韓国、インド、シンガポールなど

特例法規定型 別法によってそもそも特許対象外としたり、特別な手続を定めたりするパターン。 例) ルクセンブルクスウェーデンノルウェーなど

秘密特許なし 例) 日本、オーストリアアイルランドポルトガル、メキシコなど

(より詳しくは以下論文の後半をどうぞ)(pdf)
『特許制度に基づく技術情報の公開による大量破壊兵器の拡散リスク』八木雅浩(2014)

日本にもかつてはあった

日本でも明治32年法では秘密特許制度を採用していたが、新憲法の施行に伴う昭和23年法改正で廃止した。このタイミングで軍事っぽい制度はいろいろ廃止したということなのですかね。

実務的にはFFLとセット

国内出願を秘密にしたのに、同出願人が外国にした同内容の特許出願が外国から公開されたら意味ないから、外国出願について国の許可(FFL:foreign filing license)が必要になる制度とセットになると思われる(めんどくさい

中山基本書での言及

特許法 第4版 (法律学講座双書)

特許法 第4版 (法律学講座双書)

アメリカとの間では協定があって、アメリカで秘密指定されている特許出願は日本に入ってきても公開できない。そのための細則もある。ただ、アメリカに出願された内容と無関係に同内容の出願があった場合、理論上はダブルパテントを生む可能性があり問題が残る。

吉藤基本書での言及

秘密特許制度は開示を原則とする特許制度の趣旨と矛盾するという批判があるが、国には開示されているわけで、国はその技術を公開するもしないも自由に決定することができる状態にあるといえるので、矛盾しない。
// 「発明の公開の代償として権利付与」というときの公開と、64条でいう公開と、66条でいう公報による公開は、それぞれ趣旨が異なる

日本アカデミアでの言及

論文テーマとしてたくさん書かれているわけでもなさそうですが、ないわけでもないです。最近だと東大の玉井先生が積極的に取り上げられていますね。
HERMES-Catalog

秘密特許に関する玉井先生へのインタビューは以下。玉井先生は安全保障のために制度導入すべきという立場のようです。
間違いだらけの日の丸特許戦略:日経ビジネス電子版

弁政連は推してる

日本弁理士政治連盟は昨年に、日本は秘密特許制度を導入すべしという提言をしています。まあ一般論として制度が複雑で面倒な方が弁理士は得するので、ポジショントーク的には納得
弁政連フォーラム第320号 — 日本弁理士政治連盟

なぜこのタイミングか

秘密特許の制度というのは軍事特許の制度なので、それ系の法改正を進める現内閣がこれを進めるのは納得感。
あと、これ始めたら特許庁の負担は大きくなると思いますが、特許庁は景気良いみたいですし、うがった見方をすれば、たくさんいる任期付審査官の今後の活用どころを探しているみたいな話もあるみたいなので、その辺の事情もなくはないのかも。

個人的には

よくわからないのですが、そんなに意味あるんですかねこれ。インターネットがない時代は国家が出す公報によって世の中に広く知られる意義は大きかっただろうので、逆に秘密にすることにも意味はあったんでしょうけど、これだけ情報流通の発達した現代で、特許出願だけ秘密にしたって論文出たりなんだりするのは止められないでしょうからね。マジでガチに国家機密プロジェクト的なやつならそもそも特許出願なんかしないでしょうし。知財従事者の仕事が増えるという意味では実益あると思いますけど。玉井先生の論文は読めていないのですが、立法事実のようなものも書かれているのでしょうか。玉井先生の論文がよりどころになっていく(すでになっている?)のかなという気はします。

考察・相鉄線100周年乗り入れ記念動画

横浜の相鉄線と他線との乗り入れが始まって4ヶ月経ち、タモリ倶楽部で取り上げられたりしていましたが、いまさらですが乗り入れ開始の時につくられた記念動画をみました。


二階堂ふみが黒ギャル!曲はくるり×サカナクションのマッシュアップ 大正から令和4つの時代を超えるラブストーリー  相鉄都心直通記念ムービー「100 YEARS TRAIN」

大正時代の相鉄車内ですれ違った男女が、昭和、平成、令和の100年前の時を越えてついに言葉を交わす短編。

なにこれ。めっちゃエモい。平成の車内風景に恥ずかしいくらい見覚えがある。なにこの再現性。平成ヒトケタの90年代にティーン(13-19)の時代をまるっと相鉄沿線で過ごしたあの頃の私は、横浜の片田舎で世界は自分中心に回っていると思っていて、茶色い髪でダボダボの服を着て、浮わついて粋がった感じで相鉄線車内で深く腰掛け大股開いてジャンプ読みながら、目についたギャルになれなれしく声かけたりしてました。はずい。

f:id:ysmatsud:20200424063858p:plain (3:25くらい)

そんなこんなで何回も観ちゃいましたが、ところでどこなんですかねこの駅。

ちょっとggってみたら、めっちゃつくりこんだという監督の方のツイートを発見。

なるほど。鎌倉の方?なのかな?横浜の片田舎の空気感も知っている方なのでしょうか。もろもろの設定はしっかりつくりこまれていると考えて良いのでしょう。それではそのつもりで考察してみます。と思ってggっていたら、こんなブログを発見。

blog.livedoor.jp

大和説。なるほど。そしてこの細部への考察。リスペクトです。ああでもないこうでもないと考えながらこのブログをみつけた時は、暗闇のなかで友人に出会ったような気持ちになりました。

しかし、この考察に敬意を表しながら、私は二俣川説を唱えたいと思います。相鉄線で乗り換えるなら二俣川か大和。新宿いくなら大和から乗り換えて小田急。だからこれは大和。それもわかります。ちなみに私は大和と二俣川の間にある希望ヶ丘の高校に通っていたので土地勘のあるエリアです。私も同じ2駅の候補が浮かびましたが、大和は先に消えました。大和は地下の駅で、前後もトンネルが続きます。大和なら前後の車窓風景は不自然だし、駅に解放感があり過ぎます。そして、決定的なのはこれですね。

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令和シーンでも同じ位置に同じものがみえます。これって、これですよね。二俣川駅の。看板の配置も一致するし。

f:id:ysmatsud:20200424071808p:plain Google マップ

設定からして横浜方面に向かう電車の先頭車両に乗ってるので、この位置に停まるのも辻褄が合います。実際には置いてないベンチがありますが、そこはご愛敬。二人は海老名方面からきた各駅にのってきて、テツオは二俣川で急行に乗り換えて横浜経由で新宿に向かうつもりだったのでしょう。横浜方面に向かって各駅はホーム右側に停まるというのもビンゴ。

f:id:ysmatsud:20200424073108p:plain:w200
アイコ(相子)
f:id:ysmatsud:20200424073046p:plain:w200
テツオ(鉄夫)
(名前は勝手につけました)

乗り入れ開始初日の相鉄線時刻表はこちら。アイコが二俣川駅に着く直前にみたスマホの画面は、11/30の10:09。10:10に二俣川駅につく各駅があるので、これに乗っていたわけですね。
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…と考えると、他の時代では二俣川駅で待ち合わせたカップルが乗ってくるのに(そして実際に沿線のカップルが二俣川駅の先頭辺りで待ち合わせることはよくある)、大正シーンだけはカップルも誰も乗ってこないのは、やはり終点だからでしょう。相鉄線は大正26年に開業した当初は厚木から二俣川までだったようです。その年のうちに上星川まで延線してるみたいなので、延線後の話という設定であっても良いと思いますが、そこは開業当初という設定にこだわったわけですね。

そうすると、大正シーンのアイコはなんで降りないんだという話ですが、なんでなんですかね。まあ、そんなときもありますよね。電車とまったけどすぐ降りないでなんとなくそのまま座って物思いに耽るとき。

そして思えば、平成シーンのテツオは、乗り換えるってわけじゃなさそうですよね。二俣川駅で仲間と待ち合わせて降りて、シルクハットでビリヤードでもしてからウッキーでカラオケでもするかって感じです。

残された課題

戻るか?

令和シーンで、テツオは二俣川駅を出た後、アイコに「ここで降りなきゃいけなかったんですよね」といわれ、「次で戻るんで」と答えています。そこ、戻るか?横浜駅に向かおうとして二俣川駅で乗り過ごした場合、相鉄民なら次の鶴ヶ峰で引き返して二俣川で急行に乗りなおすなんてことはせず、快速でも各駅でもそのまま乗って横浜いった方が早いと考えるのが普通だと思います。ここはよくわからないですが、いきなり知らない女性に話しかけられて、まあとりあえずコミュニケーションのために反射的に応えてみた回答であって合理性は求めないということでも、私は別に良いです。

二俣川駅で各駅は急行が出るのを待つはず

上記考察より、テツオとアイコが運命の言葉を交わしたのは横浜行の各駅の電車内と思われますが、二俣川では各駅は急行の出発を待って後から出るというのが普通だと思うので、各駅が二俣川に停まって、何も待たずにすぐ発車する、というパターンはないんじゃないかなという気がする。最近はそうでもないのかな。どうなんだろ。

2人の子供と写真、アイコの涙の意味は?

時代をつなぐキーとなるのが2人の子供の写真ですが、あの2人は誰なんでしょうね。初見では、幼い頃は仲が良かったけど離ればなれになったアイコとテツオの幼少時代の写真なのかなと思いましたが、そういうわけでもなさそうです。また、どのシーンでも車内を走る同じ年頃の子供2人がいますが、あの2人とこの2人は同じ2人のような気もします。どういうことなの?そして、令和シーンでは、そんな2人の写真をみながらアイコが涙を流しますが、あれも一体どういうことなの。

「100日後に特許査定を得る弁理士」1~5日目

このエントリは、パテントサロン企画「知財系ライトニングトーク #8 拡張オンライン版」への参加エントリです。

在宅勤務で ヒマなので 若干時間の融通が利くので、なんとなく思い付いてツイッターで始めたネタをまとめました。元ネタはもちろんワニです。1日目限りの一発芸のつもりだったんですがうっかり5日間続けてしまいました。明日もやるかは不明です。

(2020/4/15(水))
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(2020/4/16(木))
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(2020/4/17(金))
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(2020/4/18(土))
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(2020/4/19(日))
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このまま100日毎日やるのもしんどいし、正直もう気が済んだ感あるのでたぶんやらないですが、面談から2週間で原稿送り→案文チェックから出願まで1週間→早期審査請求すれば早いものは2か月くらいで査定(OA)くるのもあるので現実味はあると思います。ネタとしてもたぶん100日分くらいはあると思っていて、2週間といいながら手付けるのは原稿期限2、3日前だったり、図面の作成を外注したりする原稿作成のリアルとか、会派仕事、弁理士会のeラーニング、中途採用の面接官としてのZOOM面接、ちょっと気になる事務の女子とのふれあい、在宅勤務生活でのZOOM飲みやZOOM合コン、抜き差しならないたまの出勤など、ネタは尽きないかなと。この自粛ムードの中で場面がほぼ家の中に限られるのはワンパターンになって飽きる必至ですが、それもまた今の空気感そのものなのでネットに残るのは面白いかもなあという気はしています。誰かやってほしい。

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ちなみに最初に思い付いたときに横にあったボールペンでプリント紙の裏にぶっつけでかいてケイタイでパシャってアップしてます。ボールペンは100円ちょっとのユニボールのシグノというやつで、弁理士試験の論文も練習から本番までこれでやりきりました。論文試験に万年筆が必須だとかはダウトです。

それでは皆様ご自愛ください。

Mendeleyで使える東大ローレビューのCSLをかいた

大学院で論文を書くのに文献管理ソフトのMendeleyを使ってるんですが、東大ローレビューに沿った引用書出しのフォーマットがなかったのでつくりました。引用フォーマットのCSLはGitHubOSS管理されていたので、プルリクしてマスターにマージされました。各種ツールから正式に使えるようになってると思います。よろしければどぞ。
github.com

東京大学法科大学院ローレビュー
http://www.sllr.j.u-tokyo.ac.jp/

東京大学法科大学院ローレビューにおける文献の引用方法
(pdf) http://www.j.u-tokyo.ac.jp/students/wp-content/uploads/sites/5/2017/11/20180115quote.pdf

CSL概要はこちら。
http://docs.citationstyles.org/en/1.0.1/primer.html

CSL仕様はこちら。
http://docs.citationstyles.org/en/1.0.1/specification.html

Mendeley CSL Editor利用ガイド
(pdf) https://www.elsevier.com/__data/assets/pdf_file/0009/794700/mendeley_csl_editor_user_guide.pdf

CSLのVisual Editorの使い方。ただ、ここで紹介されているVisual Editorは動きが重いし出力に余計なタグがくっついてきたりしてなかなかうまくできなかったので、結局普通のテキストエディタでスクラッチからかきました。
https://marineasty.wordpress.com/2013/11/19/citation-style%E3%82%92%E7%B7%A8%E9%9B%86%E3%81%99%E3%82%8B/

筑波大の学生がつくって公開してくれていたらしきmendeleyの日本語マニュアル。2013年から更新されてないですが、とっても助かりましたありがとうございます。
(pdf) https://library.k.tsukuba-tech.ac.jp/k/ori/Mendeley.pdf

以下は余談です。

日本における法律アカデミアというのはなんやかんやいうて東大をお手本としていて、日本の法律学における論文の書き方のお作法は東大アカデミアにおける論文の書き方のお作法に倣います。

そして学術論文というものは何をもって学術論文なのかというと、過去の学術論文の成果を盛り込んだ上で新たな成果を加えるという作業が学術的といわれるようです。いくら斬新な着眼点や素晴らしいアイデアであっても、過去の論文の蓄積からの文脈で語れなければ学術的ではないのですね。

そこで、過去の学術論文を探し、読み、頭に貯めるのが学術論文をかくにあたっての基礎作業になります。こういう作業の支援はコンピュータは得意です。というわけで論文を管理するツールがあります。

www.zotero.org

とか

www.mendeley.com

とかです。広く使われていますが、日本語論文のフォーマットはあまりなく、東大ローレビューのフォーマットも当然のようになかったので、自分でつくりました、という話。

OSSライセンスを紐解く:GPLと2020民法大改正

120年ぶりの民法大改正

2020年4月、120年の時を超えてついに民法が大改正されます。

2006年に法務省が改正を打ち出す
→2014年に最終案を発表
→2017年に国会で可決
→今年いよいよ施行

という平成令和を股にかけたビッグプロジェクトです。

ここに、「定型約款」という概念がめでたく法律の条文として組み込まれることになりました。この改正によって、GPLApacheライセンス、MITライセンスなどのOSSライセンスの解釈や法的取扱いがどう変わるかを考えてみます。

OSSライセンスの法的性質

OSSライセンスというのが法律的にどういう性質のものなのか、というのはそもそも決着がついていません。決着がついてないというのは、揉めた場合に裁判所がどう判断するのかわからないという意味です。例えば、OSSライセンスが契約であるとすれば、コピーレフト条項は債務として発生するので強制執行が可能ですが、解除条件付の権利不行使宣言の意思表示としての単独行為であるとすれば、コピーレフト条項を強制執行させることはできないでしょう。この違いは、MITライセンスなどのパーミッシブ系で相手側に不作為を要求するだけのOSSライセンスではあまり変わらないかもしれませんが、GPLなど相手側に作為を要求するコピーレフト系のOSSライセンスでは、その効力が決定的に変わってきます。

定型約款とはなにか

改正民法の548条の2~民法548条の4に、定型約款についての条文が入りました。この条文に当てはまれば、OSSライセンスは契約としての効力を持ち得ることになります。

第五百四十八条の二 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。

結論からいうと…やっぱり関係なさそうですね (汗
これは、この要件に当てはまれば契約とみなしますということではなくて、そもそも当事者間に何らかの契約関係があることを前提として、約款の内容がこの要件に当てはまれば契約の内容に組み入れるものとみなしますよ、という話のようですね。というわけで、上述したOSSの取り扱いの違いは、そもそも契約が存在するかどうかという問題なので、そこに対して影響があるものではなさそうです。

とりあえずこちらからは以上です。