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チガフジ100マイル完走記

コロナ禍でマラソンやトレイルのレースは軒並み中止だし、やるのかな~どうなのかな~とヤキモキするより自分たちでやっちゃえばよくね?ってことで、茅ヶ崎海抜ゼロメートルから富士山山頂までの往復100マイルを走って行って帰ってきたので記録など。40時間160kmの、イカれた大人の遠足です。

発端

2010年に湘南国際マラソンの完走を目指してゆるっと結成された茅ヶ崎のジョギングサークル #chiga_jog 、当時は10km走ったというとスゲー!とか称え合ってたんですが、最近は100マイル(160km)のフィニッシャーもチラホラ。

自分たちで100マイルの草イベントやろうぜ、という話はいつからだったかたまに話題になっていて、コース候補として箱根外輪3周、伊豆から城ケ崎までの相模湾沿岸トレースとかが挙がってたところ、茅ヶ崎から富士山頂までちょうど80kmくらいだから往復で160kmになると気付いてしまった人が。

いつかやりたいねーといいながら、日程合わせるのも実際やるのも色々大変だしなーと思っていたうち、このコロナ禍でエントリしたあのレースもそのレースも軒並み中止、そしてやるのかやらないのかよくわからないが休みであることは決まっているオリンピック休暇による4連休。ここでやるでしょ!ということで決行しました。

コース

ベースはGoogle Mapで茅ヶ崎海水浴場と富士山頂を結ぶと出てくるルート。

やると決めてから、前々週に一人で茅ヶ崎~新御殿場口を試走、前週に御殿場ルートを試走してきました。山北あたりの246は歩いては通れないことがわかったので、そこのところは旧道に迂回するように修正。また分岐してわかりにくいところはできるだけ道なりになるように微調整。

気持ち的には海沿い区間、二宮大井町区間、246区間、御殿場区間、富士山区間、という感じに分かれます。海沿い区間から御殿場区間はロードで、富士山だけトレイル。御殿場ルートの下りは、大砂走にはつらいイメージしかなかったので5-7合目間はできれば登山道を下りたいと思ったのだけど、山小屋の方にきいたらそれはマナー的にあまりよろしくないようで、大砂走を下ることを決意。

スケジュール想定

富士山はより安全な日中に、ロードはより涼しい夜間になるように。

2021/7/22(木)(祝日・海の日)
 17:00 サザンビーチCスタート→二宮→山北
  A1:山北ファミリーマート(35km)
2021/7/23(金)(祝日・体育の日)
 6:00 新御殿場口(標高1440m/70km)
  A2:大石茶屋(6:00からうどん食べれる)
 12:00 富士山頂→御鉢巡り一周(標高3776m/84km)
 16:00 新御殿場口
2021/7/24(土)
 4:00 サザンビーチCゴール(164km)
 コンビニでビールを買って健闘を称え合いながら日の出(4:45)をみたら解散

スタート・海沿い区間

というわけで予定通りの17:00、 #chiga_jog のゆかいな仲間たちの激励を受け、ANKとANDさんとKKさんと私、途中離脱予定のMTMさんとの5人で茅ヶ崎海水浴場を出発。

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ちなみに全員100km以上のレース完走経験者で、年齢的にもトレイル経験的にも私が一番ヒヨッコです。

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茅ヶ崎のスタートから平塚、大磯、二宮までの海沿いは慣れた道だし、まだ元気なので余裕のジョグ。

二宮大井町区間

二宮で線路を北側に越えて住宅街を北上し、ヒトケの少ない山間部をアップダウンしながら北上して最短ルートで246を目指す。

だいたい固まって走って適当なところでコンビニに立ち寄る、という感じで進んでいて、二宮こえた中井町のコンビニの後はしばらくコンビニのない山間部に入ります。試走した際にここのアップダウンでもう嫌になった頃に自販機が出てきてメロンソーダの缶ジュースを飲んだのを思い出して、「次は嫌になった頃に自販機が出てくるのでそこエイドで」といって進んでいたところ、先頭の人がそこにいない。まあどこかにいるだろ、と思って進んでいたがいないまま道が分岐するところまできちゃう事態が発生。はぐれちゃったなと思って連絡したところ、まあまあ近くのコンビニにいることがわかって無事に合流。この辺りで21:00くらい。

以降、コンビニごとに次のルートを確認し、分岐のある区間は固まって移動して道なりでOKなところまできたら、あと何キロくらいでこのコンビニがこっち側に出てくるからそこで合流ね(例えば、「あと5、6kmで右側にセブンがあるからそこで」)、とブリーフィングする運用が定着。

246区間

ここは大きなトラックがビュンビュン通る脇の歩道を進む区間。昼間に試走した時は左側に箱根の山々ときれいな形の矢倉岳なんかを拝みながら走ったんですけど、真っ暗で何もみえない。歩道はあれど藪に覆われたところもありました。246は自動車専用のバイパスになる区間があるので、そこでは迂回して旧道へ。このあたりで夜の23:00くらい。

暗闇の山道を進みながら、夏休みっぽいね、スタンドバイミ―っぽいね、と語り合う平均年齢40後半のおじさん達。

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御殿場区間

さみしげな山間部を抜けて、駿河小山あたりからまた町になってきます。明後日から開催されるオリンピックの自転車ロードレースのコースになっていて、応援幕などが目立つ。御殿場市に突入した辺りで夜中の2:00過ぎくらい。

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このあたりも日中だとこれまで通ってきた山がみえて景色の良い箇所もあるんですけど真っ暗で何もみえない。

さらに富士山が近付いてくると、暗闇の山頂付近に富士宮ルートと吉田ルートを登る人たちの明かりがみえてきます。

滝ヶ原駐屯地の横にあるセブンイレブンが富士山前のラストコンビニ。ここから五合目の新御殿場口をつなぐ富士山スカイラインは単調な舗装道路で、10kmを延々と800mのぼる難所です。

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この辺りで夜が明けてきて、鹿がキュンキュンいいながらこちらをみていたりしました。 f:id:ysmatsud:20210725090112j:plain

朝日に照らされる赤富士に向かって、走らず淡々と2時間くらい歩く。この富士山スカイラインは、翌日に行われるオリンピックの自転車ロードレースでは水ケ塚側から登ってこっちを一気に下るようです。

富士山区間

予定より少し遅れめで、朝7:00頃に五合目到着。既に若干のやり切った感。

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日差し対策に日傘をもってきた人。その発想はなかった。

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大石茶屋でうどんやカツ丼をいただいて準備を整え、スタートからご一緒してきてここで離脱するMTMさんに見送られながら、意気揚々と富士山に突入します。

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しかし既に徹夜で70km移動していたところに延々と続く砂利地獄。

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富士登山中に、別便の電車とバスの始発できたKSさん、HLさん、SNさんと合流することになっています。始発でくると御殿場口到着が8:15なので、既に疲れているこっちが先に登り始めても登山中に合流できる想定です。合流できずに山頂まで到着しちゃうも有り得るかもなーと思ってたら速攻合流できた。五合目から六合目までの間で追いつかれた。

私は今回の道中、ここの区間が一番つらかった。試走として先週も登ったので2週連続というか5日ぶりの御殿場登山で、なんでこんなことやってんだろ感、きました。

もうやめたい感がピークの時に合流した追走合流組のKSさんは、帰路は一緒に走る説もあったんですが、やっぱり帰路はやらないし富士山だけやったら御殿場の駅前でビールのんで帰るわ、という囁き。なにそれめっちゃ楽しそう。

しかしまあ帰路はさておいて、せっかくだから少なくとも茅ヶ崎から富士山頂まではやらないとな、と心を無にしてとにかく登る。

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雲上のカフェ・七合目の砂走館でラーメンを食べたら、元気回復。一気に頂上へ。

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頂上に着いたのが想定2時間遅れの14:00くらい。

いやいや、がんばればいけるだろうなと思ってはいましたけど、本当にきました、茅ヶ崎の海抜ゼロメートルからの茅ヶ崎ゼロ富士。または茅ヶ崎海水浴場のシンボル「C」モニュメントからの富士山頂上 "C to Summit 100mile" 略してC2S。

頂上では、追走合流組のHLさんが今年還暦を迎えられたので、赤いバフの贈呈式を行うなどしました。

帰路

そんなこんなで帰路。大砂走をぶっとばして五合目まで下りてきたところ、まさかの雨降り。ここまで富士山込みで90km近く移動してきてそれなりに疲労感もあり、これからの帰路でもし夜中雨とかだったら普通に命の危険を感じるやつです。五合目トレイルステーションの水場で足を洗うなどしながらどうしようか相談して、私は正直ここでやめて御殿場駅前でビールのむのも良いなと思ってたんですけど、まあとりあえず行ってみるか、ということに。

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五合目バス停を背にスカイラインに向かうおじさん達。もう疲れたしゆっくりいこうね、といっていたところ、腹が減り過ぎて早くコンビニに行きたいANDさんが下りとはいえここにきてキロ4分のぶっとばし。まじイカれてる。

滝ヶ原駐屯地のコンビニで腹を満たして帰路へ再出発。このあたりで19:00くらいでしたかね。

もう暗くなり始めて疲労も眠気も積もって二晩目に突入、このあたりから口数も減り始めます。ちゃんと椅子に座って食事がしたいし、早く寝たい。

帰りはほぼ下りなので、ヘロヘロの状態でも思ったより早いですね。35km地点の山北ファミリーマートで夜中の0:30くらい。

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コンビニに寄った際、眠気がたまらず駐車場の隅っこに目立たないところを探して寝る人。大人としてどうかと思う。

心を無にして淡々と進み、夜が明け始めてきた朝4:00ころに二宮あたり。

なんとここで #chiga_jog 部長が茅ヶ崎から大磯まで自転車で迎えに来てゴールまで伴走してくれるというサプライズ。ありがとうございます!!

なんだかんだで朝8:00くらいに茅ヶ崎海水浴場に帰還。

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HLさんが用意してくれたビールで乾杯。

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互いの激走を称えガッチリと握手を交わすおじさん達。

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迎えに来てくれた皆様と記念撮影。

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ありがとうございました!!

というわけで

めちゃ面白かったです。これからは茅ヶ崎の海から富士山の頂上を眺めるとき、あぁここからあそこまで走って行って帰ってきたことがあったなぁ、と思うことでしょう。

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私を含めた4人中3人のGPS計測では100マイル(160km)超えたんですが、1人は100マイルいくかどうか微妙な感じでした。計測も何が正しいかわからないですけど、事前にGoogle Mapで調べていた感じでもそのままだとギリギリ足りないも有り得るかもと思ってお鉢巡りをするつもりだったところ、今回はお鉢巡りをやりませんでした。

やっぱり富士山頂でお鉢巡りをして間違いなく100マイルを超えるのが正式ルートかなあと思うので、やり残した感があるといえばありますね。次回があるかどうかわかりませんが、あればお鉢巡り込みでお願いしたいと思います。

"走り続けるための理由はほんの少ししかないけれど、走るのをやめるための理由なら大型トラックいっぱいぶんはあるからだ。僕らにできるのは、その「ほんの少しの理由」をひとつひとつ大事に磨き続けることだけだ。" 村上春樹

「山と高原地図/箱根」を握りしめて箱根を走り尽くす #RoadToUTMF2022

実際に行こうと決めて「山と高原地図」をゲットしてまじまじと眺めながらアレコレ考えるのって、バックパッカーやってた頃に「地球の歩き方」を読み込んでたワクワク感を思い出しますね。

f:id:ysmatsud:20210523065649j:plain 3年前にトレランを始めたときに買った丹沢は、わりといろんなところにいったので箱根版を買った。フフフ。

というわけで「山と高原地図/箱根」を握りしめて箱根を何度か走り回ってとりあえず気が済んだので記録として。

0週目:自転車100マイルツーリング

来年でるつもりのトレランの100マイルレースUTMFに向けて、ランの前にとりあえず自転車で100マイル走ってみた。

f:id:ysmatsud:20210523074252j:plain stravaって時間やペースが速めに出るんだけど、設定を「レース」にすると実経過時間で表示されることに気付いた。左上に「レース」と出ているけどレースではない。

箱根エリアでは小田原から国道1号(箱根駅伝路)→箱根裏街道から、開通したてのはこね金太郎ラインへ。

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はこね金太郎ラインを通ってから丹沢湖を抜けて東の林道から松田方面にいこうとしたら、崩落による通行止めで引き返した。

1週目:箱根外輪山1周(箱根湯本駅阿弥陀寺→塔ノ峰→明星ケ岳→明神ケ岳→金時山→丸岳→長尾峠富士見公園湖尻峠三国山→山伏峠→海ノ平→鷹ノ巣山浅間山→湯坂路)

とりあえず外輪を1周。 f:id:ysmatsud:20210523081550j:plain 前回の自転車と比べると行動時間は短いですが消費カロリーは多いですね。

詳しくはこちら↓ ysmatsud.hatenablog.com

2週目:箱根外輪変則右回り

先週やり残した屏風山を通り、カルデラ内部の山を走りながら外輪山を突き抜けてカルデラの外に出るルート。

f:id:ysmatsud:20210523081941j:plain 10時間行動を目安でやってます。

昨晩まで雨が降っていたからか、羽虫がすごい飛んでて、かつトレイル中に蜘蛛の巣が張っててかき分けて進む感じでした。

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芦ノ湖西岸のトレイル。のんびりランかなと思ったら、ヤブが張り出して道が狭く湖側は切り立った崖になっていて、足踏み外したら滑落するなというような怖い個所がけっこうあった。

湖尻水門を過ぎて桃源台から箱根カルデラ中心部の神山、大涌谷、駒ケ岳あたりにも登山道があるんですけど、この辺りの山道は残念ながら2016年に火山活動が活性化してから今も立入禁止。しょうがないのでいけるところまでトレイルをいって、大涌谷の噴煙をみながら舗装道路で強羅側に抜けます。

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強羅からは正面に大文字焼の明星ケ岳がみえて、山の中腹には自転車で先週とおった箱根裏街道の切り込みがみえます。強羅の登山道から明星ケ岳を登り、大文字焼の現場へ。

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f:id:ysmatsud:20210523093030j:plain 大文字焼の大の中心部から強羅を見下ろすとこんな感じ。壮観なパノラマなんですが、写真では伝わらないですね。

明星ケ岳からは外輪山の尾根を右回りに南に下り、塔ノ峰から外輪山の外側のトレイルへ。地図ではこのルートの終点は風祭駅なんですが、小田原駅まで1kmちょいくらいだったので電車に乗らずロードを走りました。

f:id:ysmatsud:20210523083041j:plain 今回の補給はこんな感じ+ハイドレ水2L。塩分タブレットは7個たべた。マルチビタミンのサプリ剤4粒×2をもっていって途中でのんだ。ソイのドリンクは良かったけど荷物的にちょっと大きいかなという気がした。前回は終盤で水がなくなって、今回もけっこう汗かいてると思ったので昼頃に強羅の自動販売機で麦茶ペット500mlをかった。暑かったので冷たくてまじうまかった。でも最終的にハイドレ水が半分くらい残ったので手持ちだけでもったっぽい。

3週目:箱根外輪右回りから大雄山

カルデラ内でまだいっていない道を通りつつ、山と高原地図の裏面図に進むルート。

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前回は前日夜に雨が上がっていましたが、今回は昨晩まで土砂降り、朝もまだ小雨が降っている中の箱根湯本スタート。雨上がりは羽虫が増える印象だけど、まだ上がってなかったからか今回は少なかった。トレイルはどろんこで、大雨が流れていたであろう水の道がくっきりできていました。

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箱根湯本駅から20分でいける「いま、会いにゆきます」的な雨の山道。

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飛龍ノ瀧は分岐地点が既にけっこうな滝になっていた。

f:id:ysmatsud:20210523104022j:plain 二子山は旧街道からきれいに二つ並んでみえるのが名前の由来のようで、展望広場があるんですが全く何もみえなくて笑う。

芦ノ湖にでたら東岸を北上します。山と高原地図では自動車道しかないのかなという感じですが、自動車道の内側に歩道があります。 f:id:ysmatsud:20210523104353j:plain

芦ノ湖北端の湖尻水門から北側のゴルフコース内の小道を辿って仙石原へいき、登山道から金時山へ。今日は金時山から絵のような雲上の富士がみえました。 f:id:ysmatsud:20210523104647j:plain

雲に覆われる箱根カルデラ。あそこもあそこも走ったなあ。 f:id:ysmatsud:20210523104651j:plain

金時山から北の足柄峠側に抜けて山北駅をゴールにしようと思ってたんですが、なんと通行止め。まじか。よくみたら地図にもその旨かいてあったの見落としてた。

しょうがないどうしようかな、まだ通ってない浅間山あたりから大平台とか小涌谷とか宮ノ下とかに延びてるトレイルでもいくかな、と思ったんですが、やっぱり山と高原地図の裏面にいきたくて、明星ケ岳から最乗寺の方のトレイルにいってみることにした。地図によれば明神水とか神明水とかいう縁起の良さそうな水場があるみたいなのでのもうと思ったんですが、みつけらないまま最乗寺に到着。 f:id:ysmatsud:20210523104700j:plain

天狗様。明神ケ岳から下ってくると最乗寺も天狗様も背後から対面することになるので、なんだか申し訳ないような順序が違うような気になりました。

最乗寺から3kmほどで大雄山線最乗寺駅へ。 f:id:ysmatsud:20210523104711j:plain

おつランです。

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今回の補給はこんな感じ+ハイドレ水2L。塩分タブレットは6個たべた。マルチビタミンのサプリ剤は今回は4粒のんだ。鉄分のむヨーグルトはよくみたらカロリーオフで、この場合カロリーはオフらないでほしかったので物足りない気がした。ソイのタンパク質ドリンクは良かった。ホエイも良いけどなんとなくソイの方がすき。今回もハイドレ水は半分くらい残った。前回は暑かったけど今回は雨だったし涼しかったというかTシャツ短パンではちょっと寒いくらいだったが、このくらいで汗をかかない方がエネルギー効率は良いのだな。

UTMFへの道

今回、1回あたり10時間くらいを3回走って合計が150kmくらいでD+7500mくらい。UTMFは160kmのD+7500mくらいだから、この3回を一気にやる感じと考えればかなりきついけど不可能ではないかなという気もしてきた。

タイム:上で測ったデータによるとだいたい 12min/km っぽいので、このペースで160kmをやりきったとして32時間くらいか。ドロップバックエイドで着替えたりとか歯を磨いたりとか夜はペースが落ちることを考えると、どのくらいになるんだろうな。14:00スタートだとすれば34時間で完走すると二晩目を越さずに2日目の24:00にゴール、40時間だと二晩目を越して3日目の朝6:00にゴール。二晩目は幻覚をみると聞いていて恐ろしいような楽しみなような感じだけど、頑張れば二晩目を越さずにゴールできる可能性もあるのかな、どうなんだろ。

服装:とにかく汗をかかないこと。これ大事。瀬古さんがマラソンの解説をしながら「選手の調子は汗のかきかたでわかる」といっていたのを初めて聞いたときはあまりピンとこなかったけど、わかる気がしてきた。汗をかくと水と塩分、カリウムなどの栄養を失い、エネルギーを失う。失った栄養とエネルギーは補給等で賄わないといけないので、失わないに越したことはない。汗をかかないようにコントロールすることは、それだけの補給食をもつことと同じ価値がある。暑かったらすぐに軽装になろう。体を冷やし過ぎないことも大事だが、走れば温かくなるので、ちょっと寒いくらいが丁度良い気がする。

消費カロリー:上で測ったデータによればランで10時間動くとだいたい5000kcal消費で、全体で15000kcal。このエネルギーを補給と予め蓄積した脂肪等で賄うことになる。

補給計画:15000kcal、おにぎりでいうと100個!いったいどうすれば良いのか。今回の3回は固形物なしの液体とゼリーだけだったが、エネルギーの枯渇も極端な空腹も感じなくて、固形物を食べると胃腸に負荷がかかるし消化にエネルギーをもってかれるのだなという気がしてきた。かといって30時間から40時間、固形物なしの液体とゼリーだけで動き続けるというのも現実的でない気がする。富士宮のA2エイドでボラをやったときは焼きそばとかが美味しそうだったが、改めて考えると焼きそばとかは控えて、おかゆとかそういう消化の良さそうなものを自分で用意しておくのが良いのかもしれない。

箱根に響くズズーンという音

ところで直近で4回箱根を走ったんだけど、4週目のときはやたらとズズーン、ドーン、という砲撃のような音が頻繁に聞こえた。特に仙石原のゴルフコース内林道で何度も聞こえた。以前、これは富士山の方で自衛隊が訓練をしている音だというのをきいたことがあったのだけど、もっと近くから、丸岳などの外輪山の中腹から聞こえているような気がして、これは猟をしている銃の音がこだまして増幅され大きく何度も聞こえているのではないかなとも思った。でもそれにしては音が大きすぎる。上の写真のように山は雲で覆われた状態で雷の音だといわれれば納得というくらいの大きな音が何度もしていたが、雷雲ではない。

じゃあなんなのか、と思って調べてみたが、箱根だけに火山活動による地鳴りという説もなくはないようだがなんか違う。丹沢でも同じ音を聞くことがあって、そういえばこないだ大山に登ったときに同じ音をよくきいたときも雨雲の中を登っていたときだった。ggってみると、伊勢原市秦野市の公式サイトに「防衛省自衛隊東富士演習場静岡県御殿場市)において行われる訓練に由来するものである可能性が高いと思われます。」とかいてある。やっぱりこれか。

断続的な地鳴りのような重低音について | 伊勢原市

断続的な地鳴りのような重低音 | 秦野市役所

そしてこのサイトから辿れるリンクによれば訓練は毎日のようにやっているが、ここ直近で4回いった中であきらかに4週目のときだけ気になったことと大山でよくきこえたときも雨雲の中だったことを考えると、ハハーン、雲が多いと音がよく聞こえるとかなんだなきっと、と思ってggったらやっぱりそういうことがあるっぽい。

weathernews.jp

参考:曇りの日は音がうるさい? | 【バドミントンと静けさ】を愛する「としや」のブログ

涼しい地表と、そこを覆っている雲の上部が太陽に照らされて暖かいことの関係から音が屈折して、外輪山を緩く屈折して音が回り込んでくる、ということでとりあえず納得した。

箱根外輪山トレイルを1周してきた

1年後のUTMF2022に向けて準備を始めようと思い、そのキックオフ的なつもりで箱根外輪山を1周してきたので記録など。

箱根は大昔は全体として富士山のような巨大な火山だったといわれていて、噴火しまくって空洞化したところに山頂が陥没してカルデラを形成した。この陥没で残った周りの縁の部分を箱根外輪山といい、カルデラ内部にできた芦ノ湖や強羅、大涌谷などの観光地をぐるっと一周囲んでいます。

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wikipediaをよんでこういうことかなと思ってかいてみた図

箱根山 - Wikipedia

ぐるっと囲んでいるということはスタート地点から稜線を辿ってピストン(往復)ではなくワンウェイで元の位置に戻ってこれるということで、箱根湯本駅を発着として1周すると50kmのD+3000で頑張れば1日でやりきれる。そんなわけでちょっと慣れたトレイルランナーの定番コースになっています。

箱根外輪山の稜線ルートは輪とはいいながら三角形のような形で、雰囲気的にも3辺でそれぞれ金時セクション、静岡県境セクション、元箱根セクションといった感じに分かれます。今回は左回りで。

↓strava記録にラクガキしたもの f:id:ysmatsud:20210508082341j:plain f:id:ysmatsud:20210508153118j:plain

左回りルート(金時→元箱根)だと、前半にドスーンと登って後半に向けて下っていく感じ。右回りルート(元箱根→金時)だと、前半はゆるゆると登って小分けにアップダウンを繰り返しながら金時山頂に着いた後は一気に下る感じ。どちらも当然トータルの獲得標高は変わらないが、以下のように元箱根セクションはバリエーションがあるので、終わり時間など気にする必要がある場合は左回りの方があるていど融通が利く。

金時セクション

箱根湯本駅阿弥陀寺~塔ノ峰~明星ケ岳~明神ケ岳~金時山~丸岳~長尾峠あたりまで。この区間金時山を中心に、ワイルドなトレイルだったり、富士山や芦ノ湖の絶景だったりを楽しめるエリア。またこのエリアは外輪トレイルでも温泉の硫黄の匂いがして、リゾート気分を感じながら過ごすことができます。

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外輪山からのぞむ大涌谷

強羅でやっているお祭りからみる大文字焼は、このセクションの明星ケ岳の強羅側の山腹です。ちなみに箱根外輪山の最高峰は金時山(1212m)ですが、箱根最高峰はカルデラ内部の大涌谷のところにある神山(1437m)です。箱根がカルデラ化する以前の25万年前には、箱根山は今の神山の倍程度の2700m程の高さだったらしいですよ。在りし日の巨大な箱根山を心の眼でみながら外輪を進みます。

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金時山に近付くと整備されて開けた感じ

この時期はきれいに芝刈りされて整っていますが、真夏にはボーボーで景色もみえず藪漕ぎすることになり、いうほど高度もないからクッソ暑くていろいろハードルが上がります。

金時山周辺は老若男女のハイカーで渋滞しがちですが、焦らずゆっくり歩きましょう。私も小学校の林間学校かなんかで登ったなあ、そういえば。まさか30年後にこんな風に外輪1周してるなんて思いもしなかった。

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丸岳からの景色

金時山を越えた丸岳のあたりでは、正面に芦ノ湖、左奥に相模湾、右奥に駿河湾という景色がみられます。山深いカルデラ内部の湖とその両脇に海を一望できるダイナミックな絶景は、ここでしかみられないのではないでしょうか。このダイナミックさは写真では伝わらないので、是非いってみてほしいですね。

この辺りが外輪一周の中間地点で、反対側から右回りで出発したんだろうなというトレイルランナーとチョコチョコすれ違います。写真右側の稜線が、これからいく静岡県境セクションです。これを奥までいきます。

静岡県境セクション

長尾峠富士見公園湖尻峠三国山~山伏峠~海ノ平あたりまでの区間の稜線は静岡県と神奈川県の県境になっています。長尾峠あたりからは自動車道がトレイルと並行していて雰囲気がかわり、エンジン音を聞きながら走ることになります。近くで終始ブオンブオンいってるのはあんまり風情の良いものでもありませんが、その分、トレイルが整備されていたりトイレなどの施設があったりヒトケがあって安心感があったりと、文明の恩恵を得ながら進むことができます。湖尻峠までの北側を箱根スカイライン、南側を芦ノ湖スカイラインというようです。

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三国山を越えて山伏峠を越えると、隣に並行する自動車道の終わりの料金所がみえてきます。このあたりでトレイル的にも次のセクションへ。

元箱根セクション

海ノ平から曲がって箱根湯本駅まで戻ってくる区間。トレイルランナーが「箱根外輪山1周」というとき、金時セクションと静岡県境セクションは誰もが同じルートになりますが、この元箱根セクションは人により場合によりルートが異なっているようで、なかにはこの区間は走らずに1周といっている場合もあるようです。どのルートが正しいというわけでもないでしょうが、だいたい以下のようなパターンがありそうです。

ルート1:

関所跡からトレイルに入って屏風山を辿るルート。二子山は山道がなく越えられないので、ここから旧街道を辿る畑宿側か、お玉ケ池、精進池側を回って湯坂路に復帰して、鷹ノ巣山浅間山→湯坂路といく。浅間山鷹巣山、屏風山は5万2000年前の噴火でできたといわれる地質学上のれっきとした外輪山(新期外輪山)なので、「箱根外輪山1周」を名乗るならここを通るのがフルコースなのかなという気もします。ちなみに、地質学上の古期外輪山である塔ノ峰、明星ヶ岳、明神ヶ岳、丸岳、三国山と並ぶのはこのセクションだと大観山、白銀山のようですが、まともな山道もないようですしちょっと外れるのでそこはいかないで良いんじゃないでしょうか。

ルート2:

元箱根から湯坂路入口までは箱根6区のロードを辿り、湯坂路入口からトレイルに復帰して鷹ノ巣山浅間山→湯坂路といくルート。今回私が通ったのはこれ。これがオーソドックスなんじゃないかなという気はします。元箱根から湯坂路入口まではオプション的に脇道的なトレイルをつなぐこともできます。

ルート3:

元箱根から旧街道を畑宿側に抜け、旧東海道や石畳を辿ってロードメインで箱根湯本に戻るルート。

箱根湯本の温泉で汗を流して帰るのが定番です。

その他のメモなど

箱根登山鉄道の始発ホームに注意

小田原駅箱根登山鉄道の乗車ホームといえば奥にある11番線が定番ですが、なぜか朝イチの始発だけ手前の7番線から出発します。始発と2本目だと15分くらいスタート時間が変わるので、できるだけ時間を稼ごうと始発発車前に余裕で着いて11番線に停まってる電車に乗って待ってたら、隣のホームにいた電車が先に出発したときは目が点になりました。気をつけろ!

補給

これまでトライアスロンやトレランで完走に5時間以上かかるようなロングレースでは、腹が減るとやる気がなくなり集中力がなくなる気がするのと、ジェルとかああいうケミカルなものはなんとなく好きじゃないし、そして餓鬼憑き≒ハンガーノックには米粒と梅干が効くという山伏とかそっち方面の日本古来の言い伝えに納得したから、という理由でおにぎりを複数個用意してたんだけど、46時間おにぎり抱えまくってレースするのも効率悪いし、今後レースが再開されるとしてもヒト同士の接触を減らすためにエイドなどのサポートは最小限になるだろうから、省エネ身体につくりかえようと実験してみている。 で、今回はおにぎり無しの固形物なしで、途中で調達はせずに持参した補給だけでやってみた。もっていったのは以下。

玄人の人たちはみんなソフトボトルな気がしますが、いまのところ私は量が入るバックパック派。今回は最終セクションの湯坂路に入った辺りで2Lのみきった。もうちょっと暑くなるともっと必要だろう。筋肉の活動には水が必要で、これまでは水足りないと思ったら飲めば良いやくらいに思っていたんだけど、できるだけ汗をかかないように動き続けるにはどうしたら良いのかを研究しなきゃなと思っているところ。

これを一袋持っていった。食べたのは5粒くらいかな。

井村屋 ワンプッシュゼリー 塩ぷるレモン 6本 ×8袋

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これも一袋もっていった。3つ食べた。

これを2つ持って行って、食べた。

「おにぎりの代わりにせめて」と思ってもっているのがこれ。数年前は1種類か2種類くらいしかなかった気がするけど、最近は味も増えてきたので今回はこれのバナナ1、バニラ1、ストロベリー1で合計3つもっていった。全部のんだ。もっと欲しかった。

おにぎりなしでやってみて、思ったよりいけた。いけたし、そうだと思えば空腹感もなく、なんだか調子良いような気もしたし、集中力も切れなかった。なるほど、ジェルとかそういうのは、荷物が減らせるとか補給時間を短くできるとかの効率以上に、吸収のための胃腸の負荷を省力化できるということなのだな、と今更ながら気付いた。昔の人の知恵も良いですが現代科学の成果も素直に取り入れていくべきですね。

地図

今回は箱根を勉強し直そうと思って、最新版の紙の地図をゲットしてしっかり頭にいれ、握りしめて位置など確認しながら走りました。

UTMFに向けて

UTMFというのは富士山の周りの山を46時間かけて基本寝ないで100マイル(160km)走る変態レースで、他のロングレースでの完走経験などそれなりの参加条件がある上に希望者多数により抽選でハードルが高いところ、私は2020年に参加権を得たもののコロナにより中止、2021年も中止で、2022年に参加権を繰り越せることになっています。ここんところはあんまりレースのためのガチ練はやってなかったんですが、せっかくなので来年は完走を目指してエントリしようかなと。UTMFは160kmのD+7500ということで、だいたい箱根外輪3周くらい。箱根外輪1周を8時間、2周を20時間くらいでいけるようになっておけば、エイド少ないハードモードのUTMFを完走できるんじゃないだろうか。困難だけど不可能ではないかも、という気はしてきました。

弁理士試験に論文合格したときのリアル答案構成を晒す

部屋の片付けをしていたら、弁理士の論文試験に合格した年(平成23年度)の問題冊子がでてきたので晒しておきます。10年くらい前のものなので参考になるのかわかりませんが、本番試験中の息遣いみたいなものは感じられるのではないかと。 f:id:ysmatsud:20201024105027j:plain

特許・実用新案

試験開始と同時に、まずホチキス止めされた問題冊子から後半の余白用紙をバラして問題文と並べてメモっていきます。
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特実は事例が複雑なので、色のついたボールペンで主体とか状況とかを書き分けて整理してました。

意匠

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問題Ⅰの答案構成におおきく×がついてるのは、間違えたとかじゃなくて、問題Ⅰを答案に書き終えた時点で、もう問題Ⅰのことは忘れて問題Ⅱに集中するぞと脳スイッチを切り替えるためだったような気がします。忘れたけど。

商標

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OSSライセンスの"distribute"を「頒布」と訳すのは誤訳

前回のエントリでは、OSSライセンスでいう"distribute"を、日本の著作権法で手垢のついた「頒布」で訳すと誤解や混乱を生むので「配布」の方がベター、と述べた上で、実際に混乱している様子を辿ってみました。

著作権法の解釈的なところをもうちょっと突っ込んで書いておくと、日本の著作権法の文脈で話をするなら、OSSライセンスの"distribute"を「頒布」とするのは誤訳です。

著作権法でいう頒布権というのは、映画業界のロビイ活動によって認められた特別な権利で、映画フィルムの配給権を立法化したものです。普通の著作物、例えば本というのは一回売ってしまえば、それを買った人は、その本を他の誰かにあげるのも貸すのも自由です。これに対し、映画のフィルムの配給を受けた映画館が、その映画フィルムを他の映画館に渡したり貸したりするのを配給元のコントロール下に置くのが頒布権です。普通の著作物の譲渡権というのは一度適法に譲渡されると消尽しますが、映画の頒布権だけは譲渡によって消尽しないという、映画だけに特別に認められた超強力で特殊な権利なのです。

著作権法上の「頒布」は、こういう映画の頒布権を説明するための語で、特殊な色のついた語です。そういった語を他の状況に無理矢理あてはめようとすると色々とほころびが出ます。

著作権法 第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 十九 頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。

まず「貸与」という語が入ってるのが一見して特徴的です。映画フィルムの配給の話をしているからです。またここで「複製物」というのは、有形の物のことをいいます。つまり著作権法上の「頒布」は物理媒体を譲渡したり貸与したりすることをいい、インターネット送信は含まれません。 それは公衆送信(自動公衆送信、送信可能化)の問題です。

だから、OSSライセンスの"distribute"を著作権法上の「頒布」で説明すると、いくつかのOSSライセンスの許諾条件は、ソースコードを物理媒体にいれて配るのはOKだけど、AppストアやPlayストアで配ったりGithubでプロジェクトをforkするのはダメ、ということになってしまいます。

「頒布」でも一般的な用語として感覚的に伝わるんだとか、条件を満たさなくなったらterminateするんだから感覚的に貸与でも間違いじゃないじゃないかとか、そういう議論はあっていいと思いますが、既に「頒布」が定義されている著作権法のコード上に違う意味で無理矢理オーバーロードするのはエラーを生みます。

というわけで、やっぱり「頒布」に独自の解釈をするくらいなら"distribute"(≒convey)の訳は「配布」で統一していった方が良いよなと思う次第です。

OSSライセンスにおける"distribute"は「配布」か「頒布」か

結論からいうと「配布」がベターだと思う

OSSライセンスにおけるdistributionの日本語訳に「配布」と「頒布」があって、私は「配布」がベターだと思っている。日本の著作権法上では、頒布というと映画の著作物についての頒布(譲渡+貸与)の意味をもってしまうので、法律上つかわれていないニュートラルな語の方が良いと思う。GPLがv2からv3になるときにdistributeの語をconveyに置き換えたけど、これはdistributeだと国によって著作権法上の意味を持ってしまうので、知る限りどの国の法律でも使われていないconveyの語にしたという話で、色のついていない語で説明した方が良いのだろうなと。

ちなみにGPLv3の逐条解説やFSFの解説ではconvey(≒distribute)の訳語として配布を使っている場合が多い。「OSSライセンスの教科書」で上田さんは頒布といっていて、なんでかと思ったら八田さんのGPLv2参考訳がそうだかららしい。界隈でいうと姉崎さんも頒布といっているが、可知さんは配布といっている。八田さんの論文をいくつかみてみると、どうやら配布といってる場合と頒布といってる場合があるようだ。何らかの意味合いで使い分けているのかなとも思ったけど、よくわからない。

みんなOSSライセンスにおける"distribute"のことは「配布」っていった方が世界は平和になるんじゃないだろうか。

…と、以上でいいたいことは全部いいましたが詳しくいうと

OSSライセンスにおいて"distribute"という語はよく使われていて、GPLv2でもMITでもApacheでもBSDでもオープンソースの定義でも出てきます。GPLでは、"distribute"という語が米国著作権法で使われていることから、米国著作権法における用法に限定解釈されることを嫌って、v3をつくるときにどこの国でも使われていない"convey"に置き換えました。

GPLv3逐条解説におけるconvey(≒distribute)の説明(p.27)では、その定義を「プログラムを第三者に渡したり、あるいは第三者が入手可能な状態に置くこと」としています。うん。わかります。しっくりくる定義だと思います。

日本の著作権法では頒布という語が使われていて、条文上で定義されています。

著作権法 第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 十九 頒布 有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することをいい、映画の著作物又は映画の著作物において複製されている著作物にあつては、これらの著作物を公衆に提示することを目的として当該映画の著作物の複製物を譲渡し、又は貸与することを含むものとする。

「有償であるか又は無償であるかを問わず、複製物を公衆に譲渡」までは"distribute"っぽいですが、「又は貸与すること」というのは違います。ここで貸与といってるのは、レンタルビデオ屋がDVDやCDを貸したりとか、図書館が本を貸したりとか、映画の配給会社が映画のマスターテープを映画館に貸したりすることをいっています。著作権法における頒布は貸与の意味が入ってこその頒布であって、"distribute"にあえて貸与を含ませる意義はないでしょう。

OSSライセンスにおける"distribute"を「頒布」というと、ここでいう頒布は著作権法でいう頒布とは違うのだと頭の中で変換しないといけないことになり、運用でカバーするバッドノウハウを生みます。

一般的な用語として、「頒布」を辞書でひくと「配って広く行きわたらせること。 「小冊子を-する」」 (weblio) となっていて、そういう意味ではまさに"distribute"なんだと思いますが、上述したような著作権法上の用法を無視するのはちょっとナイーブなんじゃないかと思います。「配布」が正しいという積極的な理由はありませんが、あえて色のついた「頒布」を使わなくていいじゃないかという消極的な理由はあります。

ちなみに、特許法でも頒布という語が使われています。配布は使われていません。

第二十九条 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
 三 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明

いわゆる刊行物公知というやつです。逐条解説によれば、ここでいう刊行物とは、「公衆に対し頒布により公開することを目的として複製された文書、図面その他これに類する情報伝達媒体」をいい、頒布とは、「刊行物が不特定多数の者が見得るような状態におかれること」をいいます。これは"distribute"っぽいですね。

巷ではどう使われているか

なんとなくの流れとして、初期のGPLv2の訳やオープンソースの定義の訳が「頒布」となっていたし、「頒布」の方が「配布」よりもなんとなく専門用語っぽいので頒布が使われていたが、やっぱり頒布ってちょっと違くねと思いだした人たちは配布を使うようになってきたけど、引用とかでは頒布といわざるをえないときもあるし、、、という感じのように思います。

というわけで、「頒布」と「配布」と「拡布」が入り乱れている状態では混乱と憶測と誤解が広まるばかりで誰も得しないので、この乱世を鎮めるために、ここはひとつOSSライセンスにおける"distribute"の語は「配布」で統一し、定義はGPLv3逐条解説の通り「プログラムを第三者に渡したり、あるいは第三者が入手可能な状態に置くこと」として共通認識をつくっていくいうことでどうでしょうか。

「秘密特許」についておさらい

「秘密特許」制度導入についての報道があり、自民党の甘利議員が追認するtweetをしました。報道によると来年の法改正を目指すらしいので、これが本当ならもう「検討に入った」っていう段階ではなく案文できてるんじゃないですかね。

これがにわかに話題になっているので、ちょっとおさらいしておきます。ちなみに2008年にも産経新聞から秘密特許法案が国会に提出されるという報道があって、当時もちょっとブログにかきました。(これかいた私はまだギリギリ20代か…

どういう制度か

特許出願されたもののうち、国が国益にとって公開しない方が良いと判断したものについて、その内容を秘密にする制度。要するに軍事目的。秘密にするかどうかは国が決めるもので、出願人が請求するものではない(秘密意匠とは違う)。秘密になると出願人にとっては権利行使できず不利益なので、国から補償金がでる。いくつかの類型があって、こんな感じ。

特許付与型 審査して特許付与するけど、秘密期間中は公開されない。という意味では日本の秘密意匠の制度に近いか。 例) ドイツ、イタリア、スペイン、カナダ、中国、ブラジルなど

審査凍結型 秘密期間中は審査が凍結され、期間経過後に審査が再開される。 例) アメリカ、イギリス、フランス、韓国、インド、シンガポールなど

特例法規定型 別法によってそもそも特許対象外としたり、特別な手続を定めたりするパターン。 例) ルクセンブルクスウェーデンノルウェーなど

秘密特許なし 例) 日本、オーストリアアイルランドポルトガル、メキシコなど

(より詳しくは以下論文の後半をどうぞ)(pdf)
『特許制度に基づく技術情報の公開による大量破壊兵器の拡散リスク』八木雅浩(2014)

日本にもかつてはあった

日本でも明治32年法では秘密特許制度を採用していたが、新憲法の施行に伴う昭和23年法改正で廃止した。このタイミングで軍事っぽい制度はいろいろ廃止したということなのですかね。

実務的にはFFLとセット

国内出願を秘密にしたのに、同出願人が外国にした同内容の特許出願が外国から公開されたら意味ないから、外国出願について国の許可(FFL:foreign filing license)が必要になる制度とセットになると思われる(めんどくさい

中山基本書での言及

特許法 第4版 (法律学講座双書)

特許法 第4版 (法律学講座双書)

アメリカとの間では協定があって、アメリカで秘密指定されている特許出願は日本に入ってきても公開できない。そのための細則もある。ただ、アメリカに出願された内容と無関係に同内容の出願があった場合、理論上はダブルパテントを生む可能性があり問題が残る。

吉藤基本書での言及

秘密特許制度は開示を原則とする特許制度の趣旨と矛盾するという批判があるが、国には開示されているわけで、国はその技術を公開するもしないも自由に決定することができる状態にあるといえるので、矛盾しない。
// 「発明の公開の代償として権利付与」というときの公開と、64条でいう公開と、66条でいう公報による公開は、それぞれ趣旨が異なる

日本アカデミアでの言及

論文テーマとしてたくさん書かれているわけでもなさそうですが、ないわけでもないです。最近だと東大の玉井先生が積極的に取り上げられていますね。
HERMES-Catalog

秘密特許に関する玉井先生へのインタビューは以下。玉井先生は安全保障のために制度導入すべきという立場のようです。
間違いだらけの日の丸特許戦略:日経ビジネス電子版

弁政連は推してる

日本弁理士政治連盟は昨年に、日本は秘密特許制度を導入すべしという提言をしています。まあ一般論として制度が複雑で面倒な方が弁理士は得するので、ポジショントーク的には納得
弁政連フォーラム第320号 — 日本弁理士政治連盟

なぜこのタイミングか

秘密特許の制度というのは軍事特許の制度なので、それ系の法改正を進める現内閣がこれを進めるのは納得感。
あと、これ始めたら特許庁の負担は大きくなると思いますが、特許庁は景気良いみたいですし、うがった見方をすれば、たくさんいる任期付審査官の今後の活用どころを探しているみたいな話もあるみたいなので、その辺の事情もなくはないのかも。

個人的には

よくわからないのですが、そんなに意味あるんですかねこれ。インターネットがない時代は国家が出す公報によって世の中に広く知られる意義は大きかっただろうので、逆に秘密にすることにも意味はあったんでしょうけど、これだけ情報流通の発達した現代で、特許出願だけ秘密にしたって論文出たりなんだりするのは止められないでしょうからね。マジでガチに国家機密プロジェクト的なやつならそもそも特許出願なんかしないでしょうし。知財従事者の仕事が増えるという意味では実益あると思いますけど。玉井先生の論文は読めていないのですが、立法事実のようなものも書かれているのでしょうか。玉井先生の論文がよりどころになっていく(すでになっている?)のかなという気はします。