ズートピアの家庭用メディアが発売された。
ズートピア MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- 発売日: 2016/08/24
- メディア: Blu-ray
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ズートピアの面白さ、それは観てるだけで楽しくなっちゃう動物たちの世界観であり、それが全てである。この映画は10年に1本の傑作だ。ちなみにその前の10年の傑作はニモだった。またディズニーアニメか。まあいい。もう10年くらい経つよねニモ。ニモの映像表現の衝撃もやばかった。ニモの冒頭の、初めて学校いくときの道中でさ、海の中のいろんな生き物の日常世界が描かれるじゃん。あのシーン最高だよね。スクーバダイビングとかやってるとさ、海の中って、本当にあんな感じなんですよ。あっちこっちで、いろんな形をした、いろんな大きさの、いろんな生き物が、それぞれ交わったり交わらなかったりしながら、生きてんの。それを見事に描いているよね。あのイソギンチャクが海中で揺れる感じとか、海底に映る水面の揺らぎの表現とかも、まじすごい。現実以上にリアル。変な言い方だけど。ニモのDVDも何回みたことか。
ファインディング・ニモ MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- 発売日: 2016/04/20
- メディア: Blu-ray
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違った。ズートピアの話だった。
ズートピア、あれも冒頭の、ジュディが列車に乗ってズートピアにいくシーンが最高だ。寒い地域とか、暑い地域とか、熱帯雨林とか、そういう異なる気候を、おそらくは高度に発達した科学技術によってひとつの街の中に共存させ、いろんな形をした、いろんな大きさの、いろんな生き物が、一緒に暮らせるように工夫された世界。あのシーンを思い出すだけでワクワクしちゃうよ。最高だよね。
ズートピアの面白さを語るにはこれで充分だ。作りこまれた世界観と、圧倒的な映像表現、楽しい音楽。それだけでこの映画には充分な価値がある。
以上。
というわけで、この映画について、「ストーリーが意外と深い」とか「差別や偏見の描写」なんかをネチネチと語るのはナンセンスだと思っている。一緒に観に行った6歳娘は「意外と深い」とか思ってるわけないが、彼女もズートピアがだいすきになった。それはあのかわいらしい動物たちと、楽しい映像表現、楽しい音楽だ。映画をすきになる理由なんてそれが一番ただしい。それ以上でも以下でもない。
でもちょっとだけ、ちょっとだけいってしまうと、やっぱり差別とか偏見とかの描写について、ちょっと説教くさいと思うものもなくはないけれども、関心するものも多い。
強烈なインパクトなのはあのガゼルだ。ガゼル。ズートピアの劇中では、知的でセクシーなセレブリティシンガーとして登場する。みんなが憧れ、認める国民的大スター。
Shakira - Try Everything (Official Video)
冒頭では、警察官としての夢と大志を抱いて街にやってきたジュディを、巨大スクリーンの向こうから歓迎する。街が混乱した際にはオピニオンリーダーとなり、最後にはプロフェッショナルなパフォーマンスで大団円を強力に演出する。その声を演じ、歌うのはシャキーラ。シャキーラはまさにラテン系のセクシーな歌って踊れる実力派歌姫、ガゼルというキャラクターを強力にバックアップする。この映画の監督がどっかのインタビューで、「ガゼルは、誰でも夢が叶えられる街、ズートピアの最も象徴的な存在だ。」と語っていたのを読んだことがあって、最初はちょっと意味がわからなかったが、そういえば名前が、ジュディは「ウサギ」じゃないしニックも「キツネ」じゃないが、ガゼルは「ガゼル」だ。これはたぶん偶然ではない。ジュディとかニックとか、太郎とか花子とか、そういう、性別を示唆せざるを得ない名前があのキャラクターにないのは、たぶん偶然ではない。このガゼルの立派な角、これは実は、オスだけが持つものだ。つまり、彼女は男性なのだ。いわゆるトランスジェンダーだろう。劇中では触れられないが。
この映画の監督は、ゲイであることをカミングアウトしている人物だ。幼い頃のトラウマ、そしてずっと本当の自分を押し殺し、周りと衝突を避けるための役を演じながら生きてきたニックの苦悩は、おそらく監督がゲイであることと無関係ではない。冒頭のジュディが演じる劇の舞台に大きな虹が架かるのも、おそらく米国で虹がLGBT社会運動の象徴として使われていることと無関係ではない。ジュディのお隣さんとなる男性二人を、同姓カップルと考えるのは自然だろう。
そういう多様性を、ズートピアは描きまくっている。形とか、大きさとか、肌の色とか、肉食とか、草食とか、そういうある意味わかりやすい外見や分類の多様性だけでなく、内面的な多様性にも切り込んでいる。
この映画は、偏見や差別に基づく破壊と再生の物語でもあるが、この映画のすごさはやっぱり、そんな多様性の中で理解しあい、手をとりあって生きていくことの楽しさ、素晴らしさを、言葉ではなく、圧倒的な映像で表現している、冒頭のあの、ジュディが列車に乗ってズートピアにいくシーンにある。寒い地域とか、暑い地域とか、熱帯雨林とか、そういう異なる気候を、おそらくは高度に発達した科学技術によってひとつの街の中に共存させ、いろんな形をした、いろんな大きさの、いろんな生き物が、一緒に暮らせるように工夫された世界。ああ、やっぱり、多様性って良いよね!違うって、ワクワクするよね!違うもの同士が手を取り合って一緒に暮らすって、素敵なことだよね!ということを、説教臭い理屈や理論ではなく、映像によって圧倒的な説得力で焼き付けられる。
と思う。
いやー、映画って、ほんとにいいもんですね。