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池田信夫『ハイエク 知識社会の自由主義』を読んだ

オモロかった。

ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書)

ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書)

池田さんは本職がなんなのかよくわからないのだけど、経済学が専門で大学院の教授をやっているらしいのだが元々はNHKで番組つくったりしていたりして、いまはかなりの頻度でブログを更新する著名ブロガーで、まあ要するにかなりのミーハーというか新しいもん好きなんだろうと思う。池田さんのブログはウェブと社会に関する話題がほとんどで、ズバズバとものを言うので反論というか匿名の変態コメントみたいのが異常に多いらしく精神がちょっとヤラれかけたりして、ブログかくことにドクターストップがかかってもそれでもブログを書き続ける*1傷だらけの天使のような人だ。

で、池田さんのブログを読んでいてよく出てくるのがハイエクというキーワードで、そういう名前のすごい経済学者がいたらしい。池田さんのブログを読みながらなんとなく私が受けていたハイエクの印象は、これまでマルクスとかケインズとかの経済理論が熱狂的に受け入れられてきたけど、そのへんの理論はウェブ時代には通用しなくて、マルクスとかケインズとかがもてはやされていた時期にハイエクという経済学者がいて、この人は当初は変態扱いされたけど、ウェブ時代の経済動向を予見していた。みたいな感じ。

で、そのハイエクという人がなにもんかということをかいた「ハイエク入門本」みたいなんを池田さんが最近かいて、それを読んだので要するにハイエクという人がなにもんかというストーリーを自分なりにまとめておこうと思いました。

まず、マルクス(1818〜1883)

カール・マルクスは、資本主義という経済体制を理論的に分析して定義した経済学者。分析した資本主義のリクツに基づいて経済をきっちり科学的に計算して動かせばみんなハッピーになれるに決まってんじゃんということで、そういう科学的社会主義を『共産党宣言』として著した。この人のリクツは科学的にエレガントである上に情に訴えかけるものでもあったため、世界中に熱狂的な信者を生み出した。

で、ケインズ(1883〜1946)

ジョン・メイナード・ケインズは、一部のエリートがきっちり資本主義のリクツに基づいて経済を計算して計画して、国が民間にうまいこと公共投資することで経済をうまいこと操ることができますよという理論をエレガントに打ち出した官僚。1929年に始まる世界大恐慌に対するアメリカのニューディール政策ケインズの理論を実践したもので、これでアメリカが見事立ち直ったことで、世界中に熱狂的な信者を生み出した。

そして、ハイエク(1899〜1992)

フリードリヒ・アウグスト・フォン・ハイエクは、経済なんて何が起こるかなんてわかんねーんだから計算して予測するなんてできるわけねーじゃんよということを経済学的に証明してしまった人。当初は異端扱いされたらしいんだけど、なんかよくわからないけど1974年にはノーベル経済学賞を受賞しているらしい*2ハイエクは、経済というか文化は人間の理性を超えていて、正解かどうかわからずにとりあえず選択され続けた結果としてあるものなので、理性や科学によって正解を導けるというもんではなく、「不完全な知識にもとづいて生まれ、つねに進化を続ける秩序が、あらゆる合理的な計画をしのぐ」(p.5)と予言した。だから、科学的に計画した革命による劇的な変化や一部のエリートの計算でなんかうまくいくわけがなくて、「自然発生的にできた制度を維持し、起源や根拠のはっきりしないルールを守り、伝統や習慣を尊重せよ」(p.98)とする。

それは先人が現代人より賢かったからではない。何百年の歳月を経て生き残ってきた制度は、いわば歴史の実験によって何度も有効性を検証されてきたのであり、個人の経験をはるかに超える価値があるからだ
池田信夫ハイエク 知識社会の自由主義』p.98

〜なぜそうなるのかは合理的個人の行動から説明がつかない。マクロ経済学は非科学的な結果論に過ぎない。長期的には、政府が市場に影響を与えることは不可能であり、最善の政策は何もしないことだ〜
池田信夫ハイエク 知識社会の自由主義』p.46

こういう考え方って、ウィンドウズとかよりも自然発生的にできたオープンソースリナックスとかの方が圧倒的に安定したOSであることや、マイクロソフトがグーグルを生み出せなかったこととかとリンクするし、なんかものすごくウェブっぽいじゃんよ、ねえ?ということで、熱狂的な信者が生み出されている。

とかそんな感じ。

知財に関する言及もあるのですけど、その辺はなーんか違和感があるので、その辺の違和感はもうちょっとちゃんと考えてなんか整理できたらまたかきます。

*1:参考記事:米国で著名ブロガー死亡相次ぐ 日本でも「ドクターストップ」発生
〜以下、引用〜
 「ドクターストップ」がかかった著名ブロガーが国内にもいた。自身のブログのページビューが年間950万ほどにまで成長した経済学者の池田信夫さんは、
 「プレッシャーはありますよ。月間100万アクセスを超えた辺りから、寝られない日が続き、医者にブログをやめろと言われて…。もう、どうしようもないコメントやスパムとかノイズが凄く飛んでくるんですよ。私はこういったものについて気にしない方なんですが、さすがにストレスになってきています」
 と明かす。池田さんは、ストレスを抱えながらも、雑誌に掲載されるよりも社会的に影響力のある情報をいち早く掲載できるメリットがあるとして、ブログの運営は続けていく意向だ。
〜以上、引用〜

*2:よくわからないけどノーベル賞もらっといて異端てのはおかしい