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大磯クリテリウムに参加してきた

大磯で一般参加の自転車レースをやっているということを知ったので初参加してきました。近いし。
会場は大磯プリンスホテルの駐車場。大磯プリンスといえば湘南国際マラソンの会場であり、湘南ジョガーにとっては聖地のような場所ですが、自転車乗りにとっても聖地だったのですね。

これがガチの自転車野郎たちの世界か・・・胸熱。

湘南国際のときはゴールとか着替えのためのテントとかトイレとかがあるあのスペースです。ここって湘南国際でしか来たことなかったけど、こんなんなんだな。
湘南国際マラソンのとき

↓大磯クリテリウムのとき

↓メカニックのコーナーもあります

↓プールはやってない(あたりまえ)

どうやら自転車の世界では、会場内のコースで所定回数を周回する速さを競うレースをクリテリウムといい、会場内のコースを所定時間内に何周できるかを競うレースをエンデューロといい、ツールドフランスやジロデイタリアのようなのをロードレースというらしい。
ネットで大磯クリテリウムでggるとけっこう落車事故があるみたいで完全にビビッていましたが、運営側でも安全にはとても気を遣われているようで、会場でも安全に安全にというアナウンスが何度もされていました。
・ヘルメットは、指一本入るようならそれはユルい。落車した時はずれる。しっかり閉めましょう。
・コーナーでアウト→イン→アウトにいこうとするが、それやっていいのは独走状態のトップの人とかだけ。レコードの溝を回るように、自分のコースを回る。
・たとえスプリントのときでも、斜めに走ると危ない。自分のコースを走る。
トライアスロンは普通ドラフティング禁止なので、人と密集して走るという経験がないんですよね。早朝にビギナー用の集団走行練習会があったみたいなんですけど、満員で参加できず。ビビりながらネットでマナーやルールを調べたり人に聞いたりした。
というわけで初レースで初めて集団走行を体験したんですが、すごいですね。坂道下ってるような感じ。普段の平地ではケイデンス90の30kくらいで漕いでる正真正銘ビギナーですが、集団の中ではあんまり必死に漕いでないのにふとサイコンみたらケイデンス120の40kとか出てた。

しかしビギナーのカテゴリなのにこれほんとにビギナーなのかよってくらい皆さん全然速い。コーナー後のダッシュで集団に千切られ、風をモロ受けて心も折れてそのまま追い付けず撃沈orz
つうかコーナー後でダッシュかけるべきというのをわかってなかった。そうかこれは10周というよりも、コーナー区切りの半周ダッシュ×20本くらいの気持ちで望んだ方が良いのかもな…

良い経験になりました。ちゃんと修行してリベンジしに行きたいス。
おもしろかった!

今年の今後のレース予定(希望)
・3月(ラン)板橋シティマラソン
・4月(バイク)大磯クリテリウム
・5月(バイク)箱根ヒルクライム
・6月(トライアスロン)アイアンマン70.3ジャパン
・6月(トライアスロンニッサンカップ
・7月(スイム)ラフウォータースイム・イン・鎌倉
・9月(トライアスロン)横浜シーサイドトライアスロン八景島
・10月(トライアスロン川崎港トライアスロンin東扇島
・12月(ラン)湘南国際マラソン

特許の誤解 (中級編)

乗っかってみます。
inspired by 特許の誤解 (初級編)-IPFbiz


Japanese Patent Officeはどこにあるんですか?

Japanese Patent Officeというものは、ありません。

東京にある、特許の許可をしている組織というと、Japan Patent Officeです。
日本国特許庁・JPOは、Japan's Patent Officeでもなく、Japanese Patent Officeでもなく、Japan Patent Officeです。

「JPOJPOJPO!」
簡単に言えます。

ビジネスモデル特許はどうやれば取れるんですか?

ビジネスモデル特許」というものは、ありません。

たまに特許の制度的カテゴリとしてビジネスモデル特許というものが存在するように考えている方がいますが、そういうのはありません。電気、機械、化学などの分野の違いもありますが、特許という制度はひとつで、同じ定義です。そして特許というのは技術的思想の創作に対して付与されるので、経営思想、ビジネス思想自体に特許なんてされません。

ただ、その経営思想、ビジネス思想を実現するために技術的要素が必要な場合、その技術的要素について特許をとって、結果的にビジネスモデル自体を独占するということはあります。

ビジネスモデル特許というものはありませんが、あるビジネスモデルによるサービスをするために不可欠な技術的要素の特許を持っていれば、ビジネスモデル「関連の」特許を持っていると言ってもいいかもしれません。

それはそれで凄いことです。一見して技術的要素のない経営思想、ビジネス思想であっても、どこかに技術的要素を見出し、特許にしていくというのは、特許プロの腕の見せ所でもあります。

特許出願中って凄いんですよね?

まず、出願というのは一時の動作なので、「出願中」というのはオンラインでやる場合は出願ソフトを立ち上げて操作している間、特許庁に出願しにいく場合なら特許庁に出向いて窓口の人に提出しているその間、ということになるから、「出願中」という表現はおかしい…といいたがる妖怪シッタカブリa.k.a.ウィスパーにとりつかれている人がたまにいますが、「特許出願中」というのは条文でも使われている正しい法律用語です。

特許法 第二百条  特許庁の職員又はその職にあつた者がその職務に関して知得した特許出願中の発明に関する秘密を漏らし、又は盗用したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

特許出願中という表現はおかしい、と簡単に言っちゃうくらいの自称専門家だと、あんまり凄くないかも。

特許を取れば儲かると聞きました。

特許を取ったら報奨金がウン万円でた!
技術系企業では特許出願や登録に応じて会社から数万円〜数十万円の報奨金が出るところがあるみたいですね。本当です。

特許権は、発明の実施を独占できる権利であって、ただ持っていても会社として儲かるものではありません。そんなん独占しなくても誰も真似しないよという特許もあります。

でも、特許の出願件数や取得件数、査定率という数字だけが一人歩きして会社の評判に関わったりしますし、特許が絡んだ各種交渉等の場面では単純に数多く特許持ってることがアドバンテージになったりするのですね。

また、特許権を取るまでには、特許印紙だったり弁理士費用だったりで、50万円くらいはかかっちゃいますので、個人で試しにとってみるというものでもないですね。

日頃の業務において画期的な発明をした人は、知財部に、まず出願する価値があるかどうかを相談してみましょう。

会社の知財部が特許を取ってくれるらしいですが。

それは多分、知財部だけじゃなくて特許事務所も絡んでますね。
知財部が特許明細書を内製しているところもありますが。
大企業には発明者自身が特許明細書を書いて出願するというルートが用意されているところもあるみたいですね。

出願書類を書くのにもコツがいりますし、出願する前に近い発明が既に出ていないか調査することも必要。
まあまずは知財部に相談してみましょう。

その出願費用は、事業部持ちになる場合、配賦になる場合、知財部持ちになる場合、本社持ちになる場合・・・など色々のようなので、気になるようなら事前に確認しておくと良いかもしれませんね。

「プリキュアはやっぱりドキドキだよね」という心理のようなもの

一昨年に我が家の4歳娘(当時3歳)がプリキュアにハマり始め、そのころは家のテレビにプリキュアヘビーローテーションで流れていたので私と妻もみているうちに一緒になって熱心になり、今日に至るまでプリキュアブームが続いている。プリキュアはいわゆるゴレンジャー的なものと同様に、キャラクターと世界観が1年でリセットされて新しいシリーズが始まる。当時は「ドキドキプリキュア」で、いま放送されているのは「ハピネスチャージプリキュア」。今月末でこのシリーズは終わって来月から「Goプリンセスプリキュア」が始まる。娘は今のハピネスチャージプリキュアももちろん喜んで観ているのだけど、なんというか我が家にとってのTHEプリキュアはドキドキプリキュアで、先週末もドキドキのDVDを観ながら「プリキュアはやっぱりドキドキだよね」という会話をした。

ドキドキプリキュアが他のプリキュアシリーズよりも面白いと感じる作品側の理由を挙げることは可能で、例えばマナとリッカという普通の女の子のペアに大富豪のアリス(こち亀でいう中川的な)とスターアイドルのマコピー(パーマンでいうパーコ的な)という組合わせとか、ちょっとした出来心的な気持ちを増幅させてモンスターにしてしまう敵の軍団ジコチューという設定の巧みさとか、そしてそれをやっつけると目がハートになって「ラブラブラブ」といって浄化する話の纏め方とか、どれもよくできてる。どれもよくできてるけど、そのどれもが我が家におけるTHEプリキュアがドキドキプリキュアであることのクリティカルな原因ではなくて、クリティカルな原因はたぶん、ようするにハマり始めて熱いれて観ていたのが「ドキドキ」だった、ということなのだろうと思う。

思えば私はジョジョはやっぱり2部だと思っていて、4部以降はこんなのジョジョじゃねえくらいに思っている(理由はここに書いた)のは作品側の問題だと思っていたのだけど、ウェブ上では「ジョジョは5部が最高」という感想もチョイチョイみかける。作品側の問題ではなくて受け取る側の問題だとすると、まあ個人の趣味というのももちろんあるが、ようするに熱いれはじめた時にリアルタイムでやってたのがどの辺だったかという話だと考えれば、5部最高といってるのは主に若い世代であることとも合致して一応納得がいく。

こういうのを思い出補正とか同時代性とかいったりするのかもしれないが、あるシリーズ作品の中でどの辺りを好きかというのは作品側のクオリティの問題ではなくて、受け取る側の諸々のシチュエーションの問題なんだなと明確に感じたのは、私がワンピースを読み始めた頃だ。

ワンピースは私が高校生だか大学生だかの頃に始まって流行っていたが、私がワンピースを読み始めたのは大学を卒業して就職してけっこう経ってからで、その頃にリアルタイムでやっていたのはアラバスタ編とか空島編とかその辺りだった。かなり熱いれて読んでいた。

その頃の通勤電車で、小学生高学年くらいの子供たちがワンピースについて語っているのを小耳にはさんだ。いわく、「ワンピースってさ〜、昔は面白かったけど、最近つまんないよね」。

少年ジョンプどストライク世代であるはずの小学生に「昔は面白かったけど、最近つまんない」といわれたあたりを熱いれて読んでいた私は一瞬何が起きたのかと思ったが、まあそういうことなんだろう。彼にとってのアラバスタ編、空島編は、私にとってのジョジョ5部なんだろう。

というわけで、私はキュアダイアモンドのリッカがスキです。
リッカかわいいよリッカ。

ソフトウェア特許の特許請求の範囲における「〜手段」vs「〜部」

クレームの構成を「〜手段」で書くか「〜部」で書くかってまあ好みの問題なのかもしれないですけど、私は「部」派ですね。

「手段」で書く派の言い分

・なんとなく伝統的にそうしているから
・手段の方が部よりも広く解釈される

「部」で書く派の言い分

・なぜわざわざ逐語訳でmeansになる手段と書く必要があるのか(means+function的な意味で)。いやない。李下に冠を正さず。
・実施形態に「部」で書いており、その「部」とクレームにおける構成が一対一対応しているなら、なぜわざわざ手段と言い換える必要があるのか。いやない。あやしい。ちゃんと対応して書いてる自信がないのではないか。
・クレームを「手段」と書くだけで権利範囲が広くなるなんて都市伝説だ。重要なのは実施形態中で変形例をキチッとサポートしていることであり、それが全てである。クレームを「手段」で書いているか「部」で書いているかなんていうギミックの問題ではない。

s○ftbankのiphone6のタダ機種変更キャンペーンには何か落とし穴がありそうだぞと思ったけどどうやらなさそうだなと思ったけどやっぱりあったから諦めてトボトボ帰ってきた話

恨んでいるわけではありません。単純に日記として書き残しておこうかと。

私はapple製品の新しいのが出たら何がなんでも手に入れたいほどの熱心な信者ではありませんけれども、新しいのがでたら気になる程度には気に入ってiphoneを使っていて、9月にiphone6が発表された時も気になってはいたけど、まだ今のiphone5の残債縛りが半年ほど残っているので、まあまだいっか、と思っていたところ、s○ftbankがタダで機種変更キャンペーンを高らかに宣言したではないですか。

一瞬色めき立ったものの、なんだか入り組んでいて難しいケータイプラン、なにか落とし穴があるんだろうなー残債あるし、と思っていたら、どうやら純血s○ftbankのiphoneユーザは現行機種を下取りに出すことで本当に実質タダらしいぞという話が聞こえてきました。

キャリアも何が何でも1台でも多くiphone6を売ってappleに忠誠心を示したいところではあるだろうし、iphoneて中古市場でもなかなか高値で売買されているらしいから、本当に実質タダで機種変更できるのもそれなりに合理的なのかもしれないと思い、半信半疑に期待を抱きながら、とりあえず話を聞きに行こうと、発売直後に一度、s○ftbankショップの門を叩いたのでした。

そこで聞いたところによると、iphone5を下取りに出してiphone6に機種変更した場合、iphone5の残債がチャラになるわけではなく残債分は今後も当初の予定通り払い続けることになるけれども、iphone6の機種代金は実質タダになるという話でした。

なるほどそういうことなら、iphone5を下取りに出した後はすでに手元にない機種の代金を払い続ける状態にはなるけれども、それはそれでどうせ払う料金だし、だったらこれはもう変えない理由がないぞと。

このタダで機種変更キャンペーンは10月末までやってるらしく、一刻も早くiphone新機種を手に入れたいわけでもないので、発売からちょっと経って初期バグも少し枯れて、それなりに出てくるだろう評判とか使い勝手とかの話も読んだ後にじっくりと10月下旬に機種変更しようと思ったのでした。

そして迎えた10月下旬、リストアに備えて6のままだったiphone5iOSをついに8にアップデートし、データを母艦にバックアップして、それでは機種変更しちゃおうかなとwktkしながら今日、向かいましたね、再びs○ftbankショップに。

発売当初はわりと在庫が潤沢で、転売する目的でやたらと買っていった隣国のバイヤーざまあ、みたいな話も聞こえていましたが、私が望んでいた64Gは今日の時点ではもうどこも在庫がなく、予約になるとのことでした。128Gなら在庫あるとのことだったのですが、今のiphone5も64Gで充分足りているので、128Gはちょっと私にはオーバースペックなんだよなー、でも今まで渋っていたiOSもバージョンアップしちゃってもう使う気になっちゃったし、iphone6では動画のfpsiphone5の倍になるらしいので、動画けっこう撮るから容量増えるだろうしアリかなーなんて理由をつけて、機種変更する気マンマンで順番を待ちました。

少し経つと呼ばれて席につき、下取りタダ機種変更キャンペーンの具体的なカラクリをききました。

通常の契約だと、毎月3000円程度の代金が2年間発生するが月々割というのがあるので、毎月1500円程度の支払いになりますと。
そして今のiphone5を下取りに出すタダ機種変更キャンペーンだとさらに総額35000円くらいを月々から割引することになるので、64Gに機種変更した場合はちょっと値段が下がるくらいになりますと。

ふむふむ。64Gだとちょっと下がるのか。

そして128Gにした場合の増額分は250円程度になりますと。

ほほう。月々250円アップ。これくらいなら誤差の範囲だな。アリだな。

でも、iphone5の残債が残っているので、この分は払い続けることになりますと。

うん、きいていた通りだな。知ってる知ってる。アリですよ。と思っていたところ、その後にですね、出てきましたね。落とし穴が。

ですが、
その残債の支払いはもともとやはり月々3000円なんですが、それにもすでに月々割がついていて、この割引分が1750円あるんですと。その分の月々割は、機種変更してしまうとなくなってしまいますと。

…?

なので、機種変更した場合、その1750円分は月々の支払に増えることになりますと。

えっ。

だから、64Gに機種変更した場合は差額の月々1600円程度、128Gに機種変更した場合は月々2000円程度、全体として増額することになりますと。

そうですか。
そういう仕組みですか。
月々割というのがそういう仕組みであることはどこかに書いてあったんでしょう。
それはそれで合理的だとも思います。悲しいですけれども。

すでに機種変更する気マンマンになっていたので、一瞬、それでもいいから変えますと言ってしまいそうになりましたけれども、まあiphone5に不満があるわけではないし、どうしてもiphone6を使いたい理由もないので、ちょっと考えます、といって、帰ってきましたね。

残債払ってる間にもうちょっとしたら6Sとか出るだろうしな。
残債払い終わったその頃に機種変更しようかな。

なにも変わらないのも悲しいので、iphone5のボロボロになったケースと空気が入ってプカプカになってる液晶保護フィルムを新調しました。

さて、とりあえずiOSは8にしたんで、気になっていたけどiOS6ではできなかったingressでも始めるかな。

田舎町の弁理士とMBA旅行者

日本の田舎町。海岸に小さな特許事務所が開かれていた。弁理士が、町の発明家の技術を特許にしていた。その特許明細書はなんとも出来がいい。それを見たアメリカ人旅行者は、「すばらしい特許明細書だね。どれくらいの時間、明細書を書いているの」 と尋ねた。

すると弁理士は「そんなに長い時間じゃないよ」と答えた。

旅行者が「もっと明細書を書いていたら、もっと特許が取れたんだろうね。おしいなあ」と言うと、弁理士は、自分と自分の家族が食べるにはこれで十分だと言った。

「それじゃあ、あまった時間でいったい何をするの」と旅行者が聞くと、弁理士は、「陽が昇る前に起きて、海辺を散歩する。ときには、ジョギングをしたりサーフィンをしたり、釣りすることもあるね。空が明るくなってきたら、発明家に話を聞きに行って、特許明細書を書く。戻ってきたら子どもと遊んで、女房と料理をして。陽の高いうちから友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって…陽が傾いてきた頃には、もう一日終わりだね」

すると旅行者はまじめな顔で弁理士に向かってこう言った。

「ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間として、きみにアドバイスしよう。いいかい、きみは毎日、もっと長い時間、特許明細書を書くべきだ。それであまった時間は外国出願をし、営業にも出る。案件が貯まったら弁理士を雇う。そうすると売上は上がり、儲けも増える。その儲けで弁理士を2人、3人と増やしていくんだ。やがて大特許事務所ができるまでね。そうしたら中小企業の明細書を書くのはやめだ。大企業に太いパイプをつくり、大手のお得意様との仕事だけを徹底的に効率化して処理する。その頃にはきみはこのちっぽけな町を出て東京に引っ越し、アメリカ、欧州、アジア各国の事務所と提携していくだろう。きみは東京都心のインテリジェントビルから知財戦略の指揮をとるんだ」

弁理士は尋ねた。

「そうなるまでにどれくらいかかるのかね」

「二〇年、いやおそらく二五年でそこまでいくね」

「それからどうなるの」

「それから? そのときは本当にすごいことになるよ」

と旅行者はにんまりと笑い、

「今度は会長職になって、きみは億万長者になるのさ」

「それで?」

「そうしたら引退して、海岸近くの小さな町に住んで、陽が昇る前に起きて、海辺を散歩する。ときには、ジョギングをしたりサーフィンをしたり、釣りすることもあるだろうね。空が明るくなってきたら、趣味の法律書でも読んで、頭を回転させる。戻ってきたら子どもと遊んで、女房と料理をして。陽の高いうちから友達と一杯やって、ギターを弾いて、歌をうたって過ごすんだ。 どうだい。すばらしいだろう」



inspired by ネット小話「メキシコの漁師」 cf. pha著「ニートの歩き方」特設ページ

特許明細書における「〜」vs「−」vs「から」vs「乃至」

特許明細書職人たるもの、特許明細書の記載、特に特許請求の範囲の記載については、一言一句について、その意味、そう書いた理由を説明できなければならない。単語はもちろんのこと、助詞や句読点にいたるまで、なぜその語を選んだのか、なぜそこに読点を打ったのか、というのは推敲されていなければならないし、はっきりいえば、そういった詳細な検討をできない特許明細書ライターに、的確な権利範囲を表現できるわけがない。

というわけで、最近フト、「請求項1〜3に記載の」といったような記載をみて、形式的なものだし、まあ絶対イヤじゃないけど、私はこうは書かないなと思う。結論からいうと、私は「請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の」と書く。というわけで、私はなぜこう書くのか、一言一句、理由を説明してみたい。

なお、あくまでもこれは私なりの現在のところの結論であり、今後、考えが変わる可能性はあるし、違う考えに基づく記載を否定するものでもない。

それでは私見を述べます

「請求項1〜3に記載の」という記載においてまず引っかかるのは、「〜」だ。ここにいれる語として他の可能性を考えてみると、「−」、「から」、「乃至」などに置き換えることができるだろう。これらのどの記載でも特許になっているものはあるし、不明確や誤りと言い切れるものもないが、だからといってどれでも同じというわけでもないように思う。

「〜」

まあ絶対イヤじゃないですけど、なんなんですかねこの「〜」。単純に。どういう意味なんですかこれ。いやわかりますよ、感覚としては。「から」でしょ。「1〜3」というのは、「1から3」という意味でしょ。わかりますよ、日本語ネイティブの一般的な感覚としては。ちなみに米国ネイティブチェッカーが眉間にしわ寄せて「それはjapanese characterだ」といっていたのを聞いたことはありますけど。まあもちろんjapanese characterであることをもってダメとは思わないですけど、でもですね、この「〜」はどういう意味なのか、厳密な意味でよくわからないので、プロの法律文書クリエイターとしてはちょっと使うのためらいますね。だって、チルダでしょこれ。全角のチルダ。チルダってさ、例えばwikipedia(2014/9/1時点)には、「数学においては「ほぼ等しい (similar to)」を表す記号として、UNIXオペレーティングシステム上ではホームディレクトリを示す記号などとして用いられる。」って書いてありますけど、そのどちらでもないでしょ、ここで使ってる「〜」は。本来の記号としての意味とか定義とかとは離れたところでの、なんとなく絵的な感覚としての、起点からにょろにょろっとのびて終点まで、みたいな、すごくなんとなくの、まあわかるよね的な、感じなんでしょ、この「〜」を「から」と解釈するのは。不明確っていわれることも、あり得ないとは言い切れない感じしませんか。ていうか、「1〜3」というのは、「1から3」という意味なんだったら、そうなんだったら、だったら、最初から「1から3」とかいておけば良くね?

ちなみに、某SNSで、「〜」ってなんなんだ的なことをブツブツいっていたら、以下のslideshareをおしえてもらいました。おもろしかった。

(全角チルダ問題) http://www.slideshare.net/mobile/tsudaa/ss-36658329

「−」

まあこれも絶対イヤじゃないです。これも感覚としてわかりますよ、「1−3」というのは、「1から3」という意味でしょ。英語では「1-3」とかけば「1から3」という意味になるのは明確なんでしょうし、各国政府はじめ関係各所が制度調和とか統一特許とかを謳い、明細書自体の項目等のフォーマットも統一して、クライアントからも「各国移行のときにできるだけ逐語訳でいけるような記載を心掛けてちょんまげ」という要望もチラチラでてくるなかで、「1−3」と書きたくなる気持ちはわかります。でもやっぱり、「−」は「から」の意味だっていう解釈は広く一般的であり疑問の余地がないと言い切るのはちょっとためらいませんか。例えば、「1−3」というのは、1マイナス3みたいな強引な誤読も、ありえなくはない気がしませんか。不明確っていわれることも、あり得ないとは言い切れない感じしませんか。だからやっぱり、現時点では、「1から3」という意味なんだったら、だったら最初から「1から3」とかいておけば良くね?

ちなみに余談ですが、最近の特許庁内部では、拒絶理由通知を書くときには「−」を使うことが奨励されているらしいという噂。

「から」

というわけで、結局、「から」って言いたいんだったら、素直に「から」ってかくのがベターなんじゃないでしょうか。「から」というのは「から」としか読めませんから、「から」以外に誤読しようがありません。

「乃至」

これは、私はイヤです。乃至反対協会会員です。まあわかりますよ、「1乃至3」というのは、「1から3」という意味でしょ。でもさ、だったらやっぱり、「1から3」という意味なんだったらさ、最初から「1から3」て書いておけば良くね?ちなみに辞書引くと、「乃至」というのは「また」という意味もあるので、「1乃至3」は「1または3」という解釈も可能なんですよ。いや、請求項に「乃至」と書いたときは伝統的に「または」ではなく「から」という意味なんだ、という反論は可能なんだと思いますよ。一昔前まで、民法の条文において「乃至」は「から」という意味で使われていたわけですからね。でもですね、民法の条文改正でそれをなんで全部「から」に置き換えたかって、その理由のひとつは、「乃至」を「また」と解釈する可能性を排除するためだと思いますよ。なんかそういう状況で「乃至」って使い続けてるのは、私は反対ですし、不勉強っていってもいいんじゃないかと思います。

もうだいたいこのエントリで言いたいことは言っちゃいました。あとは余談です。

「請求項1から3」とかくのと、「請求項1から請求項3」とかくのは、まあ意味的には同じかとも思いますが、「請求項1から3」というのは「請求項1から請求項3」の略なんじゃないかと思います。意味が全く同じなら文字数が少ない方がより良いし、あってもなくても意味が変わらない語はない方が良いと思いますが、多少冗長になったとしても略語というのはあまり使わない方が良いと思っています。正確さと冗長さとどっちをとるかっていったら前者ですね。

というわけで、「請求項1から3」よりも「請求項1から請求項3」のほうがベター。

従属項として選択的なものであることを明確にするために「までのいずれか1項」を足して、完成。

ところで余談ですが、「請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の」という記載で不明確の拒絶理由通知を食らっているのをみたことがあります。拒絶理由通知いわく、「または」と「いずれか」という選択的な記載が重複しているので不明確であると。正しくは「請求項1または請求項2に記載の」とか、「請求項1と請求項2とのいずれか1項」とかにすべきである、とのことなんでしょう。まあいってることはわかりますけど、本当にこれ、不明確ですかね。言いたいことはわかりますけど、ちょっと腑に落ちませんね。

こちらからは以上です。